卒業生にジャズピアニストの上原ひろみ、書道家の武田双雲…

 実際に教室に見学に行ってみると、ピアノやエレクトーンがなければ、幼稚園や小学校と見まがうほどだ。教室に通う4歳児の母親は話す。「音楽を好きになったことはもちろんですが、日頃の生活で自ら音や音楽を楽しむ姿が身についているみたいです」と顔をほころばせる。

ヤマハ音楽教室。約1時間のクラスのうち、鍵盤を触ったのは15分程度に留まった。(撮影:鈴木 愛子)

 音楽教室の卒業生は既に500万人以上。ジャズピアニストの上原ひろみといった著名音楽家を輩出するだけでなく、書道家の武田双雲といった芸術家、スポーツ選手や医療業界にも多く卒業生が存在しているという。現在は、世界40カ国以上、約50万人の生徒がヤマハの音楽教室で音楽を学んでいる。

 音楽文化を根付かせるのと同時に、ヤマハは長年にわたり、子供の教育に関わってきたともいえる。「中身は音楽教室と同じようなものを提供しながら、立て付けを、仮に学童保育といったものに変えるなど、掘り起こせる需要はまだあるはず」(ヤマハの大池真人取締役上席執行役員)というのも、なるほどと頷ける。

 ヤマハが取り組むのは、子供向けの音楽教室だけではない。現在、ヤマハが力を入れるのは「街に音楽を」という試みだ。今年9月に第2回が行われる「渋谷ズンチャカ!」というお祭りもその一つ。昨年は300人の若者が思い思いの楽器を手にして、渋谷の街中を闊歩。ゴールの宮下公園では、のど自慢、楽器作り、など様々なイベントが行われ、参加者は1万人に上った。

 ほとんど表には出てこないが、渋谷ズンチャカ!を仕掛けたのが、ヤマハだ。当時の桑原敏武・渋谷区長が「音楽で渋谷を盛り上げられないか」とヤマハに相談したのがきっかけ。ヤマハが市民参加型のイベントを提案したことが、実現に至った。ヤマハは、ヤマハの名前をあえて出さずに、裏方としてイベントをサポートした。

昨年の「渋谷ズンチャカ!」の様子。有名人は誰一人いない音楽イベント。子供から大人まで音楽を楽しんだ。