保育園に子供を預けたくても預けられない「待機児童問題」が社会問題となり、注目されているのが保育士不足の問題。保育士はほかの業種に比べ体力的にもきつい仕事である一方で、年収が低いことで知られ、待遇改善が政策的にも課題となっている。

 民間も独自で手を打っており、待機児童が多い東京や神奈川などで数多くの保育園を展開する保育園運営最大手の「JPホールディングス」は前期(2016年3月期)に保育士の給与を8%ベースアップし、今期(2017年3月期)は年収を4%引き上げる予定だ。

 さらに同社は、保育士不足の解消には給与面の待遇改善以上に、保育士の人間関係の悩みといったストレスを取り除くことが重要だと考え、対策を打っている。同社の取り組みを考察する。

人間関係の悩みを取り除く

JPホールディングスの荻田和宏社長。「保育士不足の最大の理由としてよく指摘されるのが給与などの待遇だが、それと同時に保育士のストレスを取り除き、定着率を上げることが大切」 (写真:中山博敬)

 確かに待遇改善を進めれば保育士の離職率は下がるだろうが、興味深いのはJPホールディングスが待遇改善策だけでなく、保育士のストレス管理も同じように重要と考えていることだ。保育士たちにかかる様々なストレスを取り除くことにより定着率の向上を図っている。

 「若い女性保育士の離職率が高い背景には、(給与などの待遇とともに)人間関係や、仕事に抱いていた理想と現実とのギャップについての悩みがある。それを取り除く必要がある」(JPホールディングスの荻田和宏社長)。

 同社にはチューター制度があり、新人の保育士が保育園に入ったら、まず2年目や3年目の先輩がチューターとしてサポートや助言をする体制をとっている。新人にとっては慣れない仕事や環境自体が大変なストレスとなる。気軽に相談できる相手を作ることでストレスを軽減し、職場に早く溶け込めるように配慮している。

 保育園は園長と限られた人数の保育士で構成される「狭い世界」である。その結果、人間関係がちょっとこじれるだけで働きづらくなるのはよくあることだ。そこで、複数の保育園を運営する同社では、ほかの保育園を任されているベテラン園長などが保育士たちの相談に乗り、必要なら話し合いの機会を作ったり、近隣のほかの系列保育園への人事異動なども行っている。

 保護者への対応も重要な保育士の仕事だが、ごくまれにいる、いわゆるモンスターペアレントへの対応も同社の本部のベテラン職員が対応している。いずれも心身に過度の負担を掛けさせず、保育士を守るための対応だ。