「僕は台風の目ですわ。創業者のビジョン実現に向けて、ぐーっと社員を巻き込んでいく」

 5月末の退任が決まっていたローソンの玉塚元一会長が、ソフトウエア検査を手がけるハーツユナイテッドグループの社長に転じることになった。ローソン株主総会での退任決議を待つことなく、やや前のめり気味に5月15日、発表した。冒頭の言葉は、玉塚氏が同日の記者会見で語った意気込みだ。

 かねて「アイドリングはしたくない」と話していたが、まさに有言実行のスピード転身。その発信力に衰えの気配はなかった。

4月、退任を発表するローソンの玉塚会長(左)と竹増社長

 心配なのが、その玉塚氏を失うローソンの今後だ。

 店舗ごとの1日の平均売上高(日販)は54万円と、首位セブンイレブンと10万円以上の開きがある。店舗数でもファミリーマートとサークルKサンクスの統合で業界3位に転落。今年2月に三菱商事の子会社となり、商社の総合力を武器に巻き返しを図るが「長いトンネルの中にある。出口への道のりは描けていない」(国内証券アナリスト)。

 今後求められる経営上の施策は山ほどあろうが、記者は個人的に、竹増貞信社長の脱・優等生がカギを握るではないかと感じている。コンビニチェーンの成功は加盟店オーナーとの信頼関係がモノを言う。自分が加盟店オーナーだったらと考えると、竹増社長の記者会見などでの言動にはどうも打ち解けにくいというか、もっと本心をさらけだしてくれたらな、と思いたくなる場面が目立つように感じられるからだ。

明快なプレゼン。背も高く声も爽やか

 竹増社長はカッコイイ。1993年に大阪大学を卒業後、三菱商事に入社。畜産部員や社長秘書としての勤務を経て、2014年にローソン副社長に転じ、16年6月に社長に就任した。

5月15日、サラダ新商品について語る竹増社長。説明はいつも理路整然としている

 さすが有名総合商社の出身だけあって、商品や事業戦略についてのプレゼンテーションは、いつも必要な情報が必要なだけ盛り込まれ、理路整然としている。目鼻立ちはくっきり、背も高く声も爽やかで、とてもスマートな経営者といえるだろう。

 普通の企業ならこれで言うことなし。だが、コンビニ業界は話が少し違う。事業の現場を担うのが主としてコンビニ本部の社員ではなく、フランチャイズチェーン(FC)契約を結ぶ加盟店だからだ。コンビニ本部がどんなに優れた経営方針を打ち出しても、加盟店のオーナーが採用しなければ、そのコンビニチェーンは何も変わらない。

 全国店舗数が6万に迫るコンビニ業界は飽和論もささやかれ、限られたパイを奪い合う時代に入りつつある。今後は痛みを伴う事業改革も必要になる。コンビニ本部の社長には、「彼が言うことなら」と加盟店オーナーの首を縦に振らす発信力と説得力が求められる。