そもそも、こういった不自然な構図が生まれた背景には、業績予想を数字で開示してきた日本市場の慣習にある。数値目標を設定した場合、その数値より実績が下回ると、株価は値下がりするし、経営者のイメージも悪くなる。できれば避けたい。それならば素直な予想数値を出すのでは無く、低めのハードルにしよう。

 欧米の上場企業は通期予想を数値で示す事はない。日本における数値開示は、一見透明性を向上するかのように思えるが、逆に不自然な結果を生んでしまった。

 やはり無理がある、ということは東京証券取引所側も理解している。東証はこの春から、決算発表のタイミングで公表される決算短信の表記ルールを変更。業績の数値予想を、これまでの強い要請から「自発的な開示を検討下さい」という表現に緩め、暗に数値開示の廃止も容認する姿勢を示した。

数値開示取りやめの動きも

 これに対し、今回の決算シーズンでは、新日鉄住金やJFEホールディングスが通期の数値予想を見送った。今後、数値開示を取りやめる動きが広がれば、不自然に低く設定された業績予想を巡る市場との対話は無くなり、トヨタ決算での名言シリーズも終わりを迎えるかもしれない。

 しかし、数字が無くなったら無くなったで、今度は何を手掛かりに、市場は企業の業績先行きを予想して行けば良いのかという悩みに直面するはずだ。一難去ってまた一難。透明で公正のある市場作りは、なかなか難しい。