決算発表からの、トヨタ側と株式市場側の心の会話を勝手に解釈すると以下の様になるだろう。

 トヨタ「いつも通り低めの業績予想を出しましたが、実際は大きく業績が崩れる可能性は低いと思います。最終的には数%の増益で落ち着けば良いですけどね」

 市場関係者「いつもの保守的予想ですね。でも、実際はそこまで悪く無さそうですね。昨年ほど円高のダメージを受けないとすると若干の増益でしょうかね」

 こういった、トヨタと株式市場の暗黙のやりとりは上手に実行しなければ大変な事になる。市場は時に、過大に期待して株価をつり上げ、時に極端に絶望して暴落を招く。トヨタ側もスピーチライターが原稿を用意し、会見の前日には想定質問への回答練習をするなど用意周到なはずだ。そして市場にメッセージを伝える。本当の業績予想は、決算発表で公表した数値に比べて「もうちょっと良い」ですよ。「すごく良い」でも、「悪い」でも無いですよ。ちゃんと読み取って、雰囲気読んで下さいね。

 その「もうちょっと良い」のニュアンスを上手く伝えるために、練って練られたキーワードが今年の「未来への投資」である。未来への投資をしている余裕があるので、逆風ではありませんという内容だ。例年もこういった市場との対話のために、「意志ある踊り場」「年輪を重ねていく」など象徴的なコメントを前面に出すスピーチ構成にしている。

業績発表は能の世界観

 しかし、ここで率直な意見を言いたい。こんな業績開示の方法、変じゃないか。
あえて企業が低めの業績予想を出し、だれも額面通りには受け取らない。実際の数値は、経営者の醸し出す雰囲気や、微妙な言葉のニュアンスで受け取ってほしい。表面上に現れにくいものを、お互いが築きあげた共通の世界観によって埋めていく。もはや伝統芸能の世界だ。能や狂言を見ているみたいだ。言外の意味を読み取れなんて、外国人投資家にも日本の投資初心者にも伝わらない。