アマゾンフレッシュの詳細は日経ビジネスの本誌をお読みいただきたいが、利用にはプライム会員の登録のほか、月額利用料金(500円)や配送料(1回500円、6000円以上の購入で無料)が別途かかる。一方、有名専門店の商品や日用品を含む10万点以上の豊富な品揃えも特徴。使い勝手やお得感については意見が分かれるところだろうが、プライム会員にとっては選べるサービスの選択肢がさらに広がったことになる。

 アマゾンの紣川氏は4月20日の発表会でも、アマゾンプライムを「会員は様々な日常のシーンでプライムを利用し、お金と時間を節約できる。我々はオンラインショッピング史上、最もお得なサービスの一つだと考えている」と強調。具体的な数字は明らかにしていないものの、プライム会員数は年々増加しているといい、「お客様に大変高く評価をしていただける」として今後も一段と特典を拡充していくと表明した。

アマゾンジャパンの紣川(かせがわ)謙氏は「今後も積極的にサービスを拡充していく」と強調する。
アマゾンジャパンの紣川(かせがわ)謙氏は「今後も積極的にサービスを拡充していく」と強調する。

 それではなぜ、アマゾンはここまでアマゾンプライムに注力し、顧客の囲い込みに走るのか。それは、日本のEC(電子商取引)市場の競争において、新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客の消費を継続的に喚起し続けることがより重視されるようになってきているからではないだろうか。

 野村総合研究所の調査によると、日本の消費者向けEC市場は2016年度の16.5兆円から、2022年度には26兆円に拡大すると見込まれる。当面市場の拡大は順調に進む予測だが、その中身については変化の兆しもある。

ヤフーはソフトバンクと連携

 特に顕著なのが金額規模として最も大きい物販系。ネット通販が市民権を獲得していくに従い、これまで利用したことがなかった高齢者や若年層にもユーザーの幅が広がる。「未経験者」を新たに開拓することから、「経験者」をいかに他社ではなく自社のサービスに取り込み、より多くの商品を購入してもらうかという戦略が必要になる。

 物販においては、例えば家電量販大手のヨドバシカメラなど、既存の小売り大手も数年前から本格的にネット通販に注力。少子高齢化で人口が減り消費者の購買力が落ちれば、さらに限られたパイを奪い合う構図は鮮明になり市場は飽和していく。物販ほどではないものの、この流れは動画配信など他のECのカテゴリーでも同様だ。

 こうした中、危機感や競争意識を強めているのはこれまで日本のEC市場を牽引してきた大手。ヤフーは2013年秋にモール型通販サイトの「ヤフー!ショッピング」で出店料を無料にする「eコマース革命」を打ち出し、出店する事業者の数と品揃えを大幅に拡大。モールの流通額を増やした上で、ポイント還元などの販促策を強化してきた。

 さらに、親会社のソフトバンクグループと連携し、グループの携帯顧客を対象に付与ポイントを10倍に引き上げるキャンペーンを展開。6月からはソフトバンクの顧客向けに、様々な特典がある「ヤフー!プレミアム」(月額税抜462円)を無料にするキャンペーンを始める。これは、ヤフー!プレミアム会員のヤフー!ショッピングにおける購入単価が一般客の3.5倍という点に着目したためだ。

 「モールの流通額を拡大しつつ、いかにロイヤルユーザーを確保して客単価を高めていくかが大きな課題」(ヤフー広報)。中長期でみればいずれ日本のEC市場は飽和に近づく。それまでに上客をどれだけ囲い込み、1顧客あたりの収益性を高めていくかが重要だという視点がそこにはある。ヤフーの宮坂学社長も4月末の決算説明会で「(楽天やアマゾンに比べて)我々はECでは追いかける立場。まずはソフトバンクのユーザーにフォーカスし、満足度を高めたい」と強調した。

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