賃貸住宅不足が人口流出招く

 東日本大震災で新たに導入された中小事業者向けの「グループ補助金」でも、賃貸オーナーは蚊帳の外に置かれた。中小企業庁の説明によれば、賃貸物件は最終消費財にあたる。つまり、「スーパーが被災して、什器や機材の購入は補助しても、肉や野菜までは対象にしないのと同じこと」(同庁経営支援課)というわけだ。

 当時、賃貸オーナーへの支援拡充を訴えた東北の中堅不動産業者は「賃貸オーナーはみな自立再建できる富裕層だと、国は勘違いしていた」と話す。地方の賃貸オーナーには一次産業従事者が多く、相続した土地の税対策のために賃貸物件を建てている。蓄えも十分になく、東北では多くの被災オーナーが再建を諦めてしまった。

 仮に賃貸物件の再建が進んでいれば、みなし仮設としてだけでなく、建設が遅れた災害公営住宅に代わり「みなし公営住宅」としても利用できた。被災者の迅速な生活回復につながり、関連死被害は抑えられただろう。

 被災地のまちづくりにも、大きな影響があったはずだ。東北の住宅復興に詳しい弁護士は「住宅確保の選択肢が自宅再建か災害公営住宅しかないと、若年層の被災者にとっては地元を離れる十分な理由になる。東北の被災地の人口流出が進んだ背景の1つに賃貸住宅の不足がある」と指摘する。

 東北での轍を踏まない対応が熊本では求められる。全国賃貸住宅経営者協会連合会の要請後、国交省も熊本の現地調査を進めている。どのような支援の形が考えられるだろうか。

 単純に補助金の対象を広げるだけがすべてではない。当座の修復資金の融資さえ受けられれば、みなし仮設やみなし公営住宅、あるいは復興作業に入る建設会社の宿舎として、安定的に賃貸収入を得ることは可能だ。一次産業が主業で物件経営の知識に乏しいオーナーに対し、修復資金の返済計画を立てる手助けをするだけでも、効果は大きいのではないだろうか。