仮に同セグメントがJMUに合流すれば、それだけでほぼ5000億円規模の造船企業が誕生する。三井造船はこのほか、港湾クレーンや海洋資源開発などの事業も手掛けており、全体の連結売上高は2016年3月期推計で8100億円だ。本体も含めた再編に発展すればさらに大きな話になる。

 記者が昨年、インタビューした際、三井造船の田中孝雄社長は再編について「一般商船の建造能力を増やすことは考えておらず、エンジニアリングを強化した新しい形態の造船業を目指す」と述べた。ただ一方で「協力できるところとは協力する」とも指摘、柔軟な姿勢をみせた。

 ちなみに住友重機械の「船舶」セグメントの2016年3月期の売上高は推計で300億円。前述の通り、艦艇部門はすでにJMUに合流している。

 机上の計算だが、JMUをベースに、三井造船、住友重機械の造船部門が合流すれば単純合算で5000億円強に飛躍する。三島社長がどのようなシミュレーションをしているのかは知る由もないが、造船業界のプレーヤーで考えると選択肢はそう多くはない。三島社長の口ぶりからして、仕掛けるとすればそう遠くない未来に動きが表面化するだろう。

 JMU発足後の経営戦略は、再編で得た各地の造船所や設計部門などの人員を最大限有効活用するのが特徴だ。資源を運ぶ「ばら積み船」やタンカー、コンテナ船、自動車運搬船、LNG(液化天然ガス)船など様々な船を建造できるだけの余裕ある体制を構築。統合で品ぞろえが広がることで、営業力が高まるのはもちろん、特定の種類の船のマーケット動向に会社全体の収益が左右されにくくなる。材料調達の効率化などで、JMUは統合3年で100億円のコストダウンを実現したという。新興国の景気減速などで造船各社の足元の採算は厳しい情勢だが、JMUは相対的に良好な収益を確保している。

攻めの再編で地方の雇用を守れ

JMUの広島県呉市の造船所では約2000人が働く(建造中のコンテナ船)<br />(写真:橋本真宏)
JMUの広島県呉市の造船所では約2000人が働く(建造中のコンテナ船)
(写真:橋本真宏)

 造船といえば、一般的には「斜陽産業」のイメージが強いかもしれない。しかし造船所がある地方では今日でも多くの雇用を生む有力な地場産業だ。例えば、JMUの呉事業所(広島県呉市)の場合、協力会社も含めて約2000人が働く。このほかにも様々な舶用機器メーカーをはじめ、関連産業まで考えれば造船の浮沈の影響は極めて大きい。

 JMUの誘いに各社が乗るかどうかは当然それぞれの経営判断だが、地方の雇用を守っていくためにも、中長期的に攻めの再編は競争力向上の有力な選択肢だろう。

 中途半端な規模の企業が乱立する形での、国内における不毛な消耗戦から脱却すべき、という課題は様々な業界で共通する。前向きな大再編をやるのか、やらないのであれば、どうやって成長していくのか、それはトップのリーダーシップ次第だ。もっと「大風呂敷」を広げる社長が各業界で現れれば、より国内産業にダイナミズムが出てくるのではないか、そう感じた。