そろそろ新入社員が研修を終えて、職場に配属される時期だろう。フレッシュな風を吹き込む反面、世代間の考え方のギャップから、とんでもない新人が来たと大騒ぎになることも少なくない。「電話を掛けても出ないし、折り返しの連絡もない」「挨拶ができない」など新人に関する様々な問題が起きて、愚痴を言う先輩社員をよく見かける。

 ただ最近は企業が一風変わった人材を求める傾向にある。既存事業の成長に陰りがみられてきたため、新規事業に成長のきっかけを求めている。新規事業の立ち上げに欠かせないのが、従来とは異なる考え方を持つ天才社員だ。天才社員が優れた能力を発揮するには、社内の受け入れ体制を整えなくてはならない。特に一緒に働く上司の意識改革が欠かせない。既存の新入社員の育成方法では枠に収まりきらず、無理に指導すると天才社員に辞められかねないからだ。

 だがいきなり天才社員を配属された上司はどう扱っていいのか戸惑ってしまう。そんな一人が人材開発のエン・ジャパン人材活躍支援事業部の伏屋航部長だった。伏屋部長の元に昨年、一風変わった社員が部下としてやってきた。佐藤若布氏(仮名)で、伏屋部長が挨拶しても「ちーっす」と返されるなど第一印象は最悪だった。伏屋部長は「なぜ人事は佐藤さんを採用したのか不思議でならなかった。私の管理職としての能力を試されている気がした」と当時を振り返るほどだ。

 いまエン・ジャパンは新しい事業の柱を模索している。これまでとは異なる人材も探していたため、先輩社員とは異なる能力がある佐藤氏を採用した。

 一般的なエン・ジャパンの人材育成法は新規顧客の開拓のために、電話でアポイントをとったり、訪問したりすることで経験を積む。先輩のアドバイスを仰ぎながら成長していくもので、多くの社員がそうしてきた。だが佐藤氏は「私が電話を掛けるのは非効率なので他のやり方をしたい」と言い出す。伏屋部長のチームは10人しかおらず、佐藤氏は大事な戦力なため使いこなすしかなかった。

 佐藤氏が一風変わっていることは、データとしても現れていた。エン・ジャパンでは社員の適切な配置と相互理解のために性格診断テストを実施している。佐藤氏の結果はストレス耐性の項目で人付き合いが100点満点で1点しかなかった。同社の社員の平均は60点前後であることを考えると、打たれ弱い性格だった。その一方で自ら責任を持って動く主体性が81点、意思伝達力が85点もあった。自分で物事を考えて実行する能力が極めて高い。エン・ジャパンはこの点に魅力を感じ、佐藤氏の採用を決めたのだ。

エン・ジャパンの人材活躍支援事業部伏屋航部長(奥)。(写真撮影=北山宏一)