キリングループのキリンビバレッジバリューベンダーは今月、LINEと組み、自動販売機の新サービス「タピネス」を始めた。対象の自販機にLINEの画面を表示させたスマートフォンをかざすと、スマホで商品を購入できるほか、ポイントがたまる。1回の購入で1ポイントたまり、15ポイント集めると、自販機で好きな商品と交換できる。既に設置されている自販機にブルートゥースの発信機を搭載することで、タピネスに対応する。

 販売手法で攻めるキリンに対し、商品の提供を差別化することで攻めるのはアサヒ飲料だ。飲料を約1度に冷却できる「強冷自動販売機」を開発した。同社の主力商品である「三ツ矢サイダー」を中心に炭酸飲料をキンキンに冷やして提供し、今夏も猛暑の可能性が予想される日本列島で爽快な味わいを楽しんでもらう。5月から設置を始める。

 しかし、なぜいま自販機への投資なのか。自販機の設置台数は減少している。日本自動販売機工業会によると、清涼飲料の飲料自動販売機の16年の普及台数は前年比2.5%減の213万台に落ち込んだ。売上金額は4.5減の1兆7405億円だった。

 記者は2年前、日経新聞で機械業界担当として、自販機メーカーを取材していた。当時の取材では、自販機メーカーの視線の先は中国や東南アジアなどの海外にあった。国内の飲料自販機はリプレース需要が中心で市場の成長は見込めないため、幹部との取材で話題に上がるのはコンビニ向けのコーヒーマシーンばかりだった。

若者に自販機を使ってほしい

 今回、キリングループやアサヒ飲料が取り込みたいのは10代の若者だ。生まれたときからコンビニが身近にあり、10年ほど前までコンビニの商品が定価販売だったことを知らない。幅広い商品を一度に買えるコンビニで飲料も購入するため、自販機とは馴染みが薄い世代だ。自販機の利用者層は高齢化が進んでいるという声もある。

 そこでキリングループは若者の利用率が高いLINEと組むことに決めた。ブルートゥース発信機の設置費用が必要なだけでなく、ポイント制にすることで実質的な飲料の割引販売となり、さらにLINEのアカウント使用料がかかるとみられる。こうした費用を投じてでも、キリンビバレッジバリューベンダーの岩田実社長は「客を自販機の前に誘導させたい」と話し、キリングループの自販機にかける本気度が垣間見える。