日本国内に住んでいるクルド人は約2000人と言われ、その6割強が住んでいるとされるエリアが首都圏にある。それが埼玉県の川口市や蕨市など県南地区。最近はシリア内戦の戦禍を逃れるため、難民として来日する人も増えている。クルド人の故郷の地であるクルディスタンと、蕨(わらび)を掛け合わせ「ワラビスタン」とも呼ばれ始めたこの場所。なぜクルド人が続々と集まっているのか。

クルド人の新年祭「ネウロズ」の様子(写真:陶山 勉、第4・第7以外)

 紀元前、中東地域に残虐な王が存在し、病気にならないようにクルド人の若者の脳みそを食べていた。ある日、クルド人の若者がこの無慈悲な王へ反旗を翻す。王を倒し、城を占拠。城郭の上で火を焚き、勝利を知らせた――。

 これが、クルド人の新年祭「ネウロズ」の起源とされる話らしい。新たな年の到来と、「抑圧からの抵抗と自由」をみんなで祝うのだそうだ。「国家を持たない最大の民族」と言われ、苦難の歴史を持つクルド人にとって、今も「火」は自由の象徴なのだという。

 そんな神話のような昔の出来事から2000年以上の時を経て、まさか中東から遠く離れた日本で、ネウロズが大規模に開催されるようになっているとは、当時のクルド人たちも想像していなかっただろう。

蕨市民公園に在日クルド人が集結

 2016年3月20日、朝10時。埼玉県蕨市の蕨市民公園に、色鮮やかな民族衣装を身にまとった在日クルド人が続々と集まってきた。ネウロズをここで祝うためだ。主催した日本クルド文化協会によると当日は、延べ1000人のクルド人が日本中から集まったという。

ネウロズのオープニングで盛り上がる様子

 「ネウロズをお祝いし、いつも私たちの孤独を癒してくれるみなさまに感謝しています」。新年祭の開催を宣言するスピーチには、クルド人と共生している地域の日本人住民への感謝の言葉も盛り込まれていた。併せて、シリア内戦で闘っているクルド人の同胞へ祈りをささげる黙とうも実施された。

自由の象徴として実際に火が焚かれた

 クルド人は元々、トルコやシリア、イラン、イラクに広がる山岳部に住む民族で、世界に約4500万人いるとされる。だが、独立国を持てず、各国では少数民族として迫害を受けてきた苦難の歴史がある。そのため一部のクルド人は、故郷の地である「クルディスタン」を離れ、世界各地へ難民として逃れているのが現状だ。