強みだった調達と販売予測

 記者はこれまで、マクドナルドを取材する中で、同社の関係者から食材調達や販売予測に対する並々ならぬ自信を、度々聞かされてきた。

 マクドナルドは、例えば、卵に関しては地域ごとに国内で調達している一方、ビーフパティやポテトなどはグローバルから調達する。食材の特性や効率性、数量の確保に目を配りながら、約3000もの店舗に対する安定的な供給体制を構築している。

 スムーズな調達・供給を図る上では、当然のことながら販売予測が重要だ。マクドナルドは、創業者の藤田田氏が社長を務めていた2000年、フィレオフィッシュの半額セールを実施したことがある。当時の購買部長は、ディスカウント商品での販売予測の難しさを語る一方で、期間限定商品はテスト販売を経て発売するため、ある程度の予想はつくとも話していた。

 3週間で2000万食のフィレオフィッシュを売るという目標の下、購買計画を立て、加工工場の協力を仰ぎ、万全の体制でセールに臨んだ。その結果、2800万食を販売。マクドナルドはその9カ月後にも、再び同様の半額セールを実施し、話題を集めた。こうしたマクドナルドの強さは、外食業界関係者の間では語り草になっている。

 もっとも当時と今とでは、経営環境も異なるうえ、売れ行きに与える、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の影響力も大きい。販売予測を見誤ることはあり得るだろうが、そうだとしても、今回のような明らかな機会損失は、以前の同社では考えられなかったかもしれない。

「リトルM」と「ビッグM」

 販売予測を見誤った背景には、消費者ニーズの読み違いがあるように感じる。

 2015年5月、マクドナルドは健康志向を前面に出した「ベジタブルチキンバーガー」を販売した。「野菜をもっと取りたい」という消費者向けに、サラ・カサノバ社長肝いりで登場したバーガーだ。

 発売当時、ある外食企業の幹部は「消費者がマクドナルドに求めているのは“ジャンクなもの”だと思う。消費者を見誤っていないか」と首をかしげていたが、結果的に、1年もたたずにレギュラーメニューからひっそりと姿を消した。今回のグランドビッグマックの品薄問題と併せ考えると、消費者がマクドナルドに求めているのは、商品としてのインパクトやメリハリの効いた味付けだと言えるかもしれない。

最近、マクドナルドの一部店舗では店限定の値引きを実施している

 マクドナルドは、昨年、全国に3つの地区本部を置き、地域に合ったサービスやメニューの開発に力を入れている。最近では、「当店限定」などという文字の入ったポスターが貼られ、店舗限定での値引きの実施も散見される。

 こうした現場の取り組みを「リトルM」といい、全社的な施策を「ビッグM」という。下平篤雄副社長は、以前日経ビジネスの取材に対し、「業績回復のためには、リトルMとビッグMの両方が不可欠」と強調していた。

 ビッグMの施策に求められるのは、消費者からの期待を具現化した商品やサービスを通して、マクドナルドらしさを打ち出していくことだろう。今回の一件を見る限り、マクドナルドの真の回復は、もう少々先になりそうな印象を受ける。