逆風下でも続いた商品開発

 2015年3月期に2223億円の連結最終赤字に落ちこんだシャープ。コストの厳しい見直しや希望退職者の募集など、過去1年間もリストラの嵐に見舞われた。紆余曲折を経た再建計画は、今年4月2日台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との買収契約締結でとりあえず決着した。

 経営再建真っただ中の昨年10月にロボホンのコンセプトモデルを発表した際には社外から、「面白いけれど、こんなことをしている余裕などあるのか」との批判の声もあった。しかし、シャープにとって激動だったこの1年、逆風下でも大切にし続けたのがロボホンをはじめとする新規事業の開発だった。

 「色々と切り詰めながらも、新規事業の芽を育てようと尽力してくれた」。

 現在ロボホンとは異なるロボティクス関連の新規事業を手掛けるシャープ社員はこう明かす。シャープでは半期に1回、幹部に対して新規事業を手掛ける開発担当者らがコミットする機会があると言う。そこで次の開発予算などが振り分けられる。経営が傾いてからは以前に比べて予算をとりにくくなったと言うが、「ロボット、健康、環境などの成長分野を中心に、なんとか資金を回してくれるよう動いてくれた」(前出の担当者)と振り返る。

 「困難な状況においても開発に尽力してくれた。シャープにありがとうと言いたい」。共同開発したロボットクリエイターの高橋智隆・東京大学先端科学技術研究センター特任准教授も14日の発表会でこう述べた。

鴻海の元で、シャープらしい製品を

 シャープは今後の家電製品に、「モノの人工知能化=AIoT(AI×IoT)」を搭載していく計画(「ココロプロジェクト」)で、ロボホンはその第1弾の製品だ。家電をインターネットにつなげ人工知能を搭載することで、「知性を持ち、愛着が湧く」(長谷川専務)存在へと変わることを期待している。

 家電に知性と愛着を持たすココロプロジェクトは、これまで数々の独創的な商品を生み出してきた「シャープらしさ」に通じるものがある。ロボホンはまさにそれを象徴する存在だ。14日の会見では、「鴻海傘下に入ることでこうしたシャープらしさが消えてしまうのではないか」との記者からの質問に、長谷川専務は「シャープへの出資は、買収ではなく投資だと(郭台銘董事長が)言ってくれた。良い文化を残しながら収益を上げるよう助けてくれると思う」と返した。

 鴻海から調達する3888億円のうち、家電などを手掛けるコンシューマーエレクトロニクスカンパニーへは400億円が充てられる。鴻海傘下に入ることに対して開発の現場では「アイディアが形になり、世界で販売できるチャンス」と肯定的に捉えている社員が多いと言う。

 苦しい1年だったからこそ、「本当にシャープらしいものは何か。本当に消費者に受け入れられるものは何か。皆、自問しながら開発してきた」(前出の新規事業開発担当のシャープ社員)。苦しい中で育て続けた新たな事業の芽は、ロボホンを皮切りに今後相次いで日の目を見ることになるだろう。