東京に企業や人が集積するなか、なぜ石川県に本社機能を残すのでしょうか。 

 「創業から70年以上経ったが、本社機能を東京や大阪に持つ必要性は極めて薄いと思っている。各ブランドが我々のところに来て、物づくりを一緒にやっている。ITがこれだけ発達すると、あえて日本のファッション中心地である東京に本社機能を置かなくても、情報は取れる。その情報を利用しながら、静かな地方で物づくりに集中する方が理にかなっている」

池田社長は「IT業界でいうインテルのような立ち位置を目指したい」と話す。

 「ファッションの繊細な風合は、なかなか数値化できない。この風合いを出すために、どのような加工が必要かというのは一般的なデータに落とし込めない。地域内で暗黙的を人から人へ継承していく必要があると思う」

地方では人材の獲得が難しいのではないでしょうか。

 「大学生の採用については、基本的に苦労はまったくない。今では就職活動での情報収集はインターネットが中心になっている。ファションに関心を持つ学生には、小松精練がどんな会社かというものは知って貰っている。昔は石川、富山、福井の3県出身者が採用のほとんどだったが、ここ10年は他の地域出身者の方が多くなっている」

東京では無くパリとミラノを見る

なぜこれほど海外ブランドからの信頼を集めているのでしょうか。

 「ひとえに、新しい価値を一緒に作る関係を築き上げたからだ。生地にもっと光沢を出したいとか、風合いを柔らかくしたいとか、張り感を持たせたいとか、メランジ効果を高めたいとか、凹凸感を出したいとか。ファッションブランドは、より差別化されたものを作ることが極めて大事だと思っている。そういったニーズを一緒につくり上げる関係性を保てている。当社の変わりとなる会社はいないはずだ」

特に欧州ブランドとの関係性が深いですね。

 「東京と米国、ヨーロッパの世界の3極を比べてみると、ファッションはやはり、ヨーロッパが中心。歴史の深さやブランドの多さを考えると米国ではなくヨーロッパとなる。それもパリとミラノを中心として」

 「そこで有力ブランドが使った素材などは当然、同時並行的にニューヨークのブランドにも派生するし、ひいては東京や中国のマーケットにも派生する。だからシャワー効果を狙うために、まず頂上であるパリおよびミラノを中心としたところで、小松精練ブランドを認知して貰う戦略に力を入れてきた」

中東では民族衣装向けの生地トーブで強い競争力を持っていますね。

 「何10年とトーブ生地を製造してきた歴史がある。韓国や中国、インドネシア企業が後発商品を作ってきたが、当社の品質レベルで作れる会社は1社もなかった。現地で支持される理由は、素材の涼しさや質感、タッチの部分が大きい」

 「中東といっても沿岸部と内陸部ではまったく違う。高温多湿の沿岸部ではくたびれにくい、パシッとした風合にするなど、それぞれのエリアに適した商品づくりを意識している。デザイン面でも工夫をこらす。同じ白でも白色度、光沢感、タッチ、肌触りを変えている。縦糸、横糸が同じ密度でも、50種類ぐらいのクオリティーを作り出すことができる」

どのような会社の将来像を描いていますか。

 「最終製品の服が例えどのような有名ブランドであったとしても、そのブランド価値を超えるような素材メーカーとなりたい。パソコンでいう所の『(半導体メーカーの)インテル入ってる』みたいなイメージだ。当社の素材なくして先端的なスーツが作れない、といったビジネスモデルを狙っているし、今後も更に突き進めていこうと思っている」