有力ブランドの最新商品向け生地は国内工場で生産される。

 石川県は白山連峰からの伏流水が流れ込み、古くから水資源が豊富な地域だった。繊維に色を染め、水で洗い流す作業には最適の地域。古くから加賀友禅などで染色技術が花咲いた。小松精練は1943年に石川県で誕生し、染色加工を中心に事業を展開してきた。

 本社に併設された主力工場を見学することができた。蒸気が立ちこめる中、何十㍍にも及ぶ生地が巨大ローラーに巻き付けられ、色が染められている。「これは有名ブランドの最新商品向け。写真はご遠慮下さい」と何度も注意を受ける。ファッション界の秘密が工場内には隠されていた。

中東の民族衣装でシェア90%

 小松精練は中国などに生産子会社を持つものの、多くの新製品は国内生産で対応する。「染色加工はわずかな感触や質感が大きく左右する分野。数値データでは伝えられない要素が多い。ノウハウが残る国内でしかできない部分がある」と池田社長は語る。

 本社のショールームに着くと「どうしても見せたいものがある」と池田社長。取り出してきたのは、分厚い生地のサンプル集だった。手にとって一枚一枚めくってみる。最初の色は純白。次も白。さらに次も白。約50枚全てが白色の生地だ。

中東で9割のシェアを占める高級トーブ。同地域で「KOMATSU」といえば、建設機械ではなく繊維メーカーだ。

 「実は全て中東の民族衣装向け生地です」といたずらっぽく笑う池田社長。イスラム圏では男性は民族衣装「カンドゥーラ」を全身にまとう。色は真っ白で、デザイン上の大きな違いは少ない。そこで重要となるのが生地となる「トーブ」だ。小松精練は表面の質感をわずかに変えたトーブを多数手掛け、イスラム男性のおしゃれ心をくすぐる。今では高級トーブのシェア90%を占めるほどになっている。

 日本のアパレル業界が低迷するなか、欧米のファッション中心地から中東に至るまで、独自の技術で顧客を離さない小松精練。製造工程の初期段階から最終製品メーカーと綿密なコミュニケーションを取り、他社が真似できないものを作る。独自のビジネスモデルをけん引する池田社長へのインタビューを次のページでは紹介する。