初代iPhoneと全く同じプレゼン手法
筆者がクルマが“走るスマホ”になったと感じたのは、こうした発表前日の行列を見聞きしたのに加え、発表会そのものの演出にもあった。
「今夜は皆さんに素晴らしいプロダクトをお見せします。きっと驚かれるでしょう」。米国時間3月31日にロサンゼルスで開いた発表イベントで、イーロン・マスクCEOはこう切り出した。そしてこう続けた。「でもその前に、なぜテスラが存在するのか。なぜEVをつくるのか。それに何の意味があるのか話をしよう」。
排ガスや二酸化炭素などの環境問題に触れたあとで、これまでに発売した「ロードスター」や「モデルS」、「モデルX」が何を変え、自動車業界にどんな影響を与えたのかを、分かりやすい身振り手振りを交えながら語り始めた。
「ロードスターのユニークな点は、それが世界初の本当にすばらしいEVだったこと。それまでは、誰もがEVは遅く、ダサく、航続距離は短く、パフォーマンスも悪いものだと思っていた。その固定観念を壊す必要があった、私たちは非常に少ない台数しかつくっていなかったが、自動車業界にはかなり大きな影響を与えた」
「多くの人が、ロードスターを『高すぎる』と言った。日常的に使えるクルマや、世界のすばらしいセダンに対抗できるクルマを作ることはできないだろうと言った。そこで私たちはモデルSをつくった」

この話法や演出は、初代iPhoneを発表した故・スティーブ・ジョブズ氏をほぼ踏襲していると言っていい。ジョブズ氏も、米アップルが成し遂げた「Mac」や「iPod」による業界全体の変化に触れ、「3つ目」の革新としてiPhoneを発表したのだった。
余談だが、マスクCEOはエイプリルフールにちなんで「今夜は(実物を)お見せできません…。冗談です!」と会場を笑わせたが、ジョブズ氏もスクリーンを前に「これがiPhoneです」と言ってiPodの画像を表示させ、「冗談です!」と笑わせたことがある。
もちろん、演出だけでなく、クルマの中身も“走るスマホ”になった。
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