鳥取県東部森林組合に勤務する伊藤綾沙子さん(32歳)も事務職から林業に転職した1人。「体を動かす仕事がしたいと考えていて、組合から声をかけてもらった。森林での作業は慣れるまで相当きつかったが、女性にはできない仕事では必ずしもない」と話す。

鳥取県東部森林組合に勤務する伊藤綾沙子さん。「森林の仕事ガイダンス」では林業に就業した先輩としてトークショーのパネリストを務めた
鳥取県東部森林組合に勤務する伊藤綾沙子さん。「森林の仕事ガイダンス」では林業に就業した先輩としてトークショーのパネリストを務めた

 2003年度から始めた緑の雇用事業を通じて、林業に就業した2014年度までで約1万5000人。ガイダンス以外に林業の実務を体験したり、本格的に資格を取得する目的の研修も用意している。

 緑の雇用事業を実施する全国森林組合連合会、担い手雇用対策部の菊地英晃部長は「一般に多くの人は林業を就職先として考えていないのが現状だ。例え、興味があっても仕事内容や就職先についてのイメージがない。ガイダンスでは就職先自体は斡旋しないが、まずは林業を知ってもらい、各都道府県の担当者ともつながりを持ってもらう。そして、実際に林業を体験してもらった上で、就職活動をしてもらうのが狙いだ。就職後も研修プログラムを準備して支援する」と説明する。

 大学校や就活セミナー、研修制度によって、林業が1つの就職先として認知される。そのことが新たな担い手を呼び込んでいる。

 さらに、若年層を呼び込んでいる要因の一つが、林業の機械化、作業の自動化だ。林業には木の伐採、枝払い、決められた長さの丸太を作る玉切り作業などがある。森林の中から伐採した樹木を運び出したり、玉切りした丸太を搬送車で運び出す作業もある。今やこれらの多くは重機で作業ができる。林業関係者も「最近はメカ好きの若者が就業するケースも増えた。日々、楽しそうに作業している」と話す。

 ただし、林業が重労働であることには変わりない。ある林業関係者は「森林に憧れた、田舎暮らしをしたいなど気軽な気持ちで林業に就業しないほうがいい。『きつい・きたない・きけん』のいわゆる『3K職場』であることには変わりない」と話す。

 重機での作業が増えても、チェーンソーと燃料を担ぎ、山林に割って入って抜倒したり、苗木を背負って山の斜面を登り植林したりするなどの作業は多くある。夏は虫に悩まされ、チェーンソー作業や木材の伐採、搬出作業は常に危険と隣り合わせだ。自然災害に巻き込まれることもある。

 それでも日中、自然の中で働き、夜は家族と過ごしたり休息を取ったりする生活は都市部で働く若者を魅了する。働き改革のうたい、多くの企業が残業を減らすなど努力しているが、その分、業務時間内の仕事の負荷が増えたり、スマートフォンやパソコンなどで外出先や自宅で仕事をしないといけない職場も依然として多い。

 林業への転職者からは、都市部での仕事、生活で大きなストレスを感じ、その状況を変えるために林業を選んだという声も少なくない。林業に新たな若い担い手が参入することは、林業自体の働き方の改革にもつながるだろうが、同時に、都市部での事務職の働き方、ライフスタイルに一石を投じることになり、それが大きな変化をもたらす可能性もあるだろう。

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