約30万人いた従業員が6万数千人にまで減る大規模な組織再編を経験した米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)。かつては売上高で世界一のIT企業だったが、2015年にはクラウド事業「ヘリオン・パブリック・クラウド」から撤退し、分社化や部門売却によってITハードウエアに特化する戦略を採った。

 2018年2月には再編を指揮したメグ・ホイットマン氏がCEO(最高経営責任者)を退任し、アントニオ・ネリ氏が新CEOに就任した。組織再編と新体制の内情について、HPEの日本法人である日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)の吉田仁志社長に聞いた。

大規模に人材が入れ替わる組織再編がありました。

吉田仁志社長(以下、吉田)前回はヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が取り組んでいる改革や人材育成方針をご説明しました。新体制になり、日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)でも新しいメンバーと一緒に成長を目指しています。

 その取材の中で外資系企業特有の考え方として、「ローパフォーマー3人とハイパフォーマー2人を入れ替える」といった事例もご紹介しましが、こうした人事は、外資系企業にはそのような考え方を持ち、実施している会社があると話したまでで、HPEでは実施していません。

日本ヒューレット・パッカードの吉田仁志社長(写真=陶山 勉)

人材が定着する企業文化

人材を入れ替えることで生産性は高められます。なぜHPEでは実施しないのでしょうか。

吉田:ハイパフォーマーに長く勤めてもらうためです。従業員を大事にする企業文化によって、ハイパフォーマーが会社に定着しやすくなると考えています。

 実はHPEは外資系企業でありながら、長く勤める社員が多いのが特徴なんです。それは日本HPEだけではありません。米国や欧州でも、勤続20年や30年といった社員が珍しくありません。2018年2月にCEO(最高経営責任者)に就任したアントニオ・ネリも、HPEに22年勤めています。

 新CEOの方針は「文化」「人」「楽しんで働く」を重視することです。IT業界はほかの業界に比べて転職がしやすく、転職先に困らないハイパフォーマーほど辞めていく実態があるからこそ、長く勤める社員が多いHPEの文化を大事にして、優秀な人材に長く勤めてもらえる企業を目指しています。

 パフォーマンスを基準に定期的に人材を入れ替えている企業があることは意識しています。そういった人事をやらないと決めたからこそ、それを言い訳にせずに生産性を高める努力を続けていきます。

従業員全員がハイパフォーマーということはないですよね。仕事の向き不向きがあり、成果を出せない社員もいるのではないですか。

吉田:そうですね。社員の能力と仕事に必要な能力のミスマッチは必ず起きます。