中国で、想定以上のモバイル化を体感したのは、このレストランだけではない。一番強く実感したのが、道路上でタクシーを捕まえようとした時のことだった。

 以前、記者が中国を訪れたのは2010年。上海万博が開催され、人が溢れていた当時の上海では、タクシーを拾うのも一苦労だった。たくさんの人が路上で片手を上げて、タクシーの奪い合いをしたことがとても印象に残っていた。

 ところが、今回訪れた上海と杭州では、この風景が一変していた。タクシーが捕まりにくいという状況は変わらないが、路上で手を挙げている人はほとんど見当たらない。彼らが代わりに手にしているのはスマホ。横から様子を伺ってみると、どうやら、タクシーの配車アプリやライドシェアを手掛ける「Uber」などを使って、車を呼んでいる。

 2015年末にシェアリング・エコノミーに関する特集で、いかに中国でUberが浸透しているかを取り上げた。そのため、ある程度はこのような状況を予想していたが、驚いたのが杭州のホテルのフロントでタクシーを呼んでくれと頼んだ時のことだ。

 フロントの女性はおもむろに自分のスマホを取り出し、配車アプリでタクシーを呼んでくれた。電話を使ってタクシーを呼ぶという文化も中国ではなくなりつつあるらしい。

日本とは全く異次元のモバイル化

 そもそも、今回、記者が上海近郊を訪れたのは、中国のEC(電子商取引)に関する特集の取材のためだった。その中でも触れているが、中国のEC市場は2016年に100兆円を超えると言われており、その6割弱がスマホ経由。しかも、何を買うかを検討する際に、必ずと言っていいほど情報源として利用するのが、ウィーチャットなどの対話アプリやブログだという。

 中国では共働き世帯が多く、平日は自宅で荷物の受け取りがしにくいため、ECを利用するとオフィスを届け先に指定することが多い。中国市場戦略研究所の徐向東氏は「昼休みにオフィスに届いた荷物を開いて周りの人と感想を言い合ったり、チャットアプリで意見交換したりしてまたその場で、ECで買い物をするのが日常の風景だ」と、話す。

 当然、ECで中国市場を攻略しようと考えている日本企業は、チャットアプリや有名人のブログなどを使ったマーケティングを強化しようとしている。ただ、今回久しぶりに中国を訪れて肌で感じたのは、日本とは全く異次元のモバイル化の実態だった。変化のスピードは想像以上に速く、消費者は新しいサービスを貪欲に求めている。日本企業が、日本国内の常識やスピード感でモバイル対応を進めていては、中国の消費者の心を掴むのは難しい。