一方、一般的には、風車の羽根が大きくなるにつれて、より大きな騒音が発生する。大型風車の騒音など、環境問題を巡っては、近隣住民から苦情が寄せられたり、設置に対する反対運動が起きたりする。中には設置を巡って訴訟に発展し、計画を中断した例もある。

日本特有の環境から生まれるイノベーション

 出力を上げるためには大型化を目指したいが、環境への影響を考えるとむやみに大きくはできない。日本の風力発電は、こうしたジレンマを抱えている。

 対策として、1つの大型風車を建てるのではなく、より出力の低い風車を複数設置する選択肢はある。ただ、1つの風車を建てる場合に比べて広い敷地が必要になったり、複数の風車に対応する設備を設けなければならないため割高となる。そこで大屋教授が考えたのが、1つの風車と1つの支柱がセットになっている通常タイプとは異なり、1つの支柱に複数の風車を設置する「マルチローター」の仕組みなのだ。

 大屋教授は「同じ出力を持つマルチローターシステム1基と通常タイプ1基を比較すると、理論的には、マルチローターシステムの方が軽量化やコスト低減を図ることができる」と説明する。

 まずは約3キロワットの風車を3つ組み合わせた出力10キロワットの小型風力発電の実用化を目指す。2015年12月、テスト機を設置し、現在実証実験を続けている。五輪マークのように5つの風車を組み合わせたタイプなども検討中で、デザイン的にも面白い展開ができそうだ。

 なお、羽根の外側を囲む形で「集風体」と呼ぶ輪を加えたのも、大屋教授が開発した風車の特徴だ。集風体によって風の渦を作ることで風力を強めるという。

 欧米などに比べ、導入が遅れている日本の風力発電。山が多く平地が少ない複雑な地形や人口密度が高いゆえの騒音問題など、風力発電の導入に不利な条件を解決するのはやはりイノベーションだろう。

 これまで日本は、日本独自の課題を解決するためモノづくりの技術を磨いてきた。そして生まれたものは世界にも通用する技術として羽ばたいてきた歴史がある。大屋教授が開発を進めるマルチローターシステムはそうした可能性を秘めている。