「日本で働くのは魅力的」わずか2割

 これは彼女だけの問題とは言い切れない。日本国際化推進協会が留学生・元留学生ら819人を対象に昨年10〜11月に実施した「日本で働くことについての調査」によれば、日本で働くことを「非常に魅力的」と答えたのは4.3%、「やや魅力的」と答えたのは17.7%。合計しても2割強しかない。

 いっぽうで、「全く魅力的ではない(15.6%)」と「あまり魅力的ではない(34.3%)」の合計は約5割。同協会の協力を得て詳細に分析してもらったところ、就労経験がある人ほど、「全く魅力的でない」を選ぶ傾向が強かった。「日本に住むことが魅力的」と答えた人が8割を超すのと比べると、対照的だ。

 同調査をまとめたシンガポール出身の留学生、ツェン・オスティンさん(東京大学に在学中)は「カルチャーの問題がある」と言う。

 たとえば、よく指摘される「長時間労働」。調査でも65.4%が「日本企業への就職を敬遠する理由になる」と答えた。「残業がそもそも嫌い」という人も多いが、シンガポールなどにも長時間労働はある。それでも、オスティンさんの同郷の先輩は日本企業の長時間労働の特殊性を挙げるという。「ダラダラといるだけの人が多い。翌日来たら昼寝しているのに、長時間が評価されるのは変」「長時間労働と、評価基準の関係がよく分からない」。生産性が評価に反映されていないことが不満になっている。

日本企業への就職を敬遠する理由(単位:%)
出所:日本国際化推進協会、複数回答可

 このため、オスティンさんの周囲ではこんな留学生が増えてきたそうだ。

 「いったん日本企業に就職して、3年間は働く。そこで、ビジネスレベルの日本語やマナーを鍛える。社会人としての基礎を身につけて、多言語でビジネスをできるようになったところで、グローバルに活躍できる外資系企業からスカウトしてもらいます」。先進国の留学生ほど、このケースが多い。

 こんな話を様々な留学生から聞くうちに、気になったことがある。これは、外国人に限らず、日本人も一緒ではないか?ということだ。長時間労働、評価基準の不明確さ…。長らく「問題だ」とか、「おかしい」とか指摘されながらも、記者も含めて、何となく受け入れてしまっていることだ。「日本人と違って、私たちは無理やり日本で働く必要はないので、容赦なくノーを突きつけます」と、数年前に日本企業を退職した元留学生のベトナム人起業家は話す。

 もちろん、昨今の「女性活躍」の議論もあり、日本企業のなかでもこうした不透明さを改善しようという動きは出始めている。ただ、まだ多くの留学生が納得できるほどには、それぞれの職場の「働き方」として落とし込んでいくことはできていない。

 立命館アジア太平洋大学国際経営学部の李根煕(イ・クニ)准教授は「日本企業は留学生を『共創』ができる相手だと捉えたほうがいい」と話す。海外市場の開拓や訪日客外国人向けのサービスといった事業面だけでなく、内部の組織を見つめ直すという点でも「共創」は可能なはずだ。

 今日で4月。留学生も含めて、職場に新しい人材が加わる季節がやってきた。異なるバックグラウンドを持つ人材の声に耳を傾ける、ちょうど良い機会だ。やみくもに自分たちの色に染めようとするのではなく、働き方を見直すキッカケにしてみてはどうだろう。

 ちなみに記者も、本日4月1日付で日本経済新聞企業報道部に異動した。

3年間、ありがとうございました。