「異なるバックグラウンドを持った留学生という存在を、会社は生かせているのかな、って思うんです。ビザの手続きとか、私たちの採用コストは、通常の日本人を採るよりも高いはずなのに…」

 待ち合わせたカフェで対面すると、中国人の彼女は流暢な日本語でそう話しはじめた。東京都内にある日本のIT(情報技術)関連企業で働きはじめて約3年。日本企業の働き方に疑問を感じることが多いという。

 詳しくは後述するが、日経ビジネス本誌4月4日号の特集「移民ノミクス」の取材中の出来事だ。この特集では「生まれた国と異なる場所で1年以上暮らす人」という国際連合の定義にもとづいて「移民」を捉え、日本で暮らす様々な外国人に話を聞いた。

 なかでも留学生は、多くの人が想像しやすい、日本にいる外国人だろう。日本学生支援機構が公表している2015年5月1日時点の外国人留学生数は20万8379人。このうち大学、大学院など高等教育機関の留学生が15万2062人を占め、残りの5万6317人は日本語学校に通っている。

日本には20万人の留学生がいる
●日本の教育機関に在籍する外国人留学生の数
出所:日本学生支援機構(各年とも5月1日時点)

 これらの学校を卒業した人のいくらかが日本企業の門を叩く。カフェで話を聞いた彼女も、その1人だ。最近は「グローバル化」の掛け声のもと、留学生の採用枠を設ける日本企業も増加。「3年前、留学生に目をつけていたのは主にメーカーとIT企業だったが、昨年、今年は外食や小売りなど流通企業も前のめりだ」と、東南アジアからの留学生の就職を支援するVACSインターナショナル(東京都豊島区)の田上竜也副社長は言う。

ラブコールとは裏腹に

 しかし、現役の留学生や、留学を経て日本企業で働く(あるいは、働いていた)社員、留学生を教えている教授らに話を聞くと、日本企業の評判は概して芳しくない。IT関連企業で働く彼女の話に戻ろう。

 彼女は、中国・青島の近くで育ち、高校卒業を機に日本の大学へ留学した。大学院に進学するか迷ったが、「日本の社会を知りたい」と、学卒で今の会社に就職することを決めた。

 就職したばかりの頃、彼女は「丁寧な指導が嬉しい」と感じた。文系学部の出身だったため、先輩がITのイロハを教えてくれたことで、スムーズに業務に馴染むことができたという。しかし、1年経っても状況は変わらない。「スキルが付いたのだから、もっと1人で任せてくれてもいいのに。刺激が少ない」。

 スキルと与えられる仕事のバランスが崩れている、と感じていた。また、自分の能力がどう評価されているのか、給与や賞与との関係も明確ではない。50代の本部長に相談すると、「俺らの時は、そんなこと考える暇もなかった」と一蹴されてしまった。

 悩んだ彼女は、転職を考えた。だが、人材会社が主催する転職フェアに行ったところ、また別の疑問がわいてきたという。「出展企業の人たちは、どうして週末なのに働いているんだろう」。