Jパワーという特異な存在

 海外展開を成功に導くポイントはどこか。先行事例になりそうなのが日本の大手電力の中でも例外的に海外事業を急拡大させてきたJパワー(電源開発)だ。タイや米国など6カ国・地域で発電事業を展開しており、発電所の持分出力は7000メガワットを超える。2025年度には発電能力の3分の1が海外になる見通しだ。

 特にタイでは全土で消費する電力の1割を担っており、よく知られた存在だという。ではどうやってJパワーはタイ事業を成功させてきたのか。その詳細は現地取材をもとに企業研究「『Jパワー(電源開発)』が海外では有名な理由」にまとめた。要約すると同社はタイの電力当局や国営会社と信頼関係を構築しており、ここに強さの理由がある。

 なぜ信頼される存在になれたのか。企業研究には盛り込めなかったが、Jパワーとタイとの関係を象徴するものが、ミャンマーとの国境にほど近いシーナカリン湖にある。1970年代、タイ政府はここに長期間かけて同国初の大規模水力発電所を建設した。当時のタイ電力業界には巨大ダムを建設するノウハウが足りなかった。そこで実現性調査から設計、施工管理までコンサルタントという立場で支えたのがJパワーの電力マンだったという。

 その貢献が評価され、湖畔にあるダム建設記念碑にはJパワーの英語名(Electric Power Development Co.,Ltd.)の頭文字が刻まれている。「当時ダム建設に携わったJパワーのエンジニアが今もここを訪れ、『EPDC』の4文字を満足げに眺めていく」とタイ現地法人関係者が教えてくれた。このシーナカリンダムを含め、Jパワーは現在までにタイの多くのプロジェクトにコンサルタントとして参画。一つずつ実績を積み上げる過程で、タイ政府や業界との信頼関係を醸成していったのだという。

タイのシーナカリン湖のダム湖畔に設置された記念碑。Jパワーの貢献を評価し、同社の頭文字が刻まれている
タイのシーナカリン湖のダム湖畔に設置された記念碑。Jパワーの貢献を評価し、同社の頭文字が刻まれている

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