国は今回のJERAモデルを成功例に、送配電事業や原子力事業でも業界再編を促したい考えだ。だがこちらについては一筋縄にはいきそうもない。「現状では送配電や原子力を統合する明確なメリットが見込めない。むしろ福島原発のリスクが付いて回ることになる」(電力関係者)と慎重な姿勢が業界では目立つ。

 そもそも東電の事業規模や抱える資産は国内最大。再編によって東電に飲み込まれてしまうと脅威を感じる企業もある。これを勘案し、JERA統合の会見後に経産省で開かれた東電改革・1F問題委員会では、再編で誕生する会社に対して東電の持ち株比率を抑えるべきだという意見も出た。どんな形であれば再編はスムーズに進むのか、それが本当に東電の利益になり、ひいては福島第一原発事故収束に寄与するのか、JERAの統合が合意に至ったとはいえ、その後に続く成功例が出る保証はない。

海外事業の拡大にも集まる期待

 JERAに期待されているのは燃料事業や国内発電事業の効率的な運営だけではない。海外の発電事業を加速させ、収益力を高めていくことも求められている。会見で東電の廣瀬直己社長は「海外事業を活発化させて、大きな収益(を確保すること)を期待している」と話した。東電の再建計画骨子にも「グローバルなエネルギー企業を目指す」存在としてJERAが位置づけられている。福島第一原発の事故費用を賄うためにも、成長が見込める海外市場に積極参入することは焦眉の急というわけだ。

 もっとも、海外事業強化を掲げているのは東電ばかりではない。たとえば東北電力は1月末に発表した2020年度までの中期経営方針に「北・中米および東南アジアにおける発電事業の拡大」という文言を記載しており、関西電力も同じく中計で「国際事業の飛躍的な成長」を掲げる。人口減や省エネにより、国内の電力需要は縮小していく公算が大きい。ここで手を拱いていては未来はない、そんな焦りが各社の目を海外へと向かわせている。

 自動車業界をはじめ日本の主だった産業の多くは既に何十年も前から海外展開に本腰を入れ、成功と失敗を繰り返してきた。一方、費用を電気料金に上乗せできる総括原価方式に守られ、地域独占を謳歌してきた日本の電力会社の海外展開は相対的に遅れている。たとえば東電、中部電が海外に持つ発電所の持分出力は国内の1割にも満たない。

 震災前に東京電力が一時海外に目を向けたことはあった。ただ「基本的には商社の言いなりで、自分たちでは判断できなかった」と当時を知る東電関係者は振り返る。「海外では欧米の電力会社が既に各地に積極進出している。良い案件を確保するのは容易ではないだろう」(同)。

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