五反田に集まったベンチャー企業は現在、技術者、広報など役職ごとの交流会で、情報交換をする場も設けている。今後は積極的に地域として五反田への誘致を図っていこうというアイデアが「五反田バレー構想」だ。

 こうした活況は徐々に家賃に反映されつつある。ヒトカラメディアの木幡大地・企画営業部リーダーは「契約の更改などに合わせ、2年前より3000~4000円上げるオーナーが出てきた」と語る。未だに渋谷などと比べれば家賃の魅力は高いが、小規模なベンチャーの中には、「五反田の次」を模索する企業も出てきているという。「田町、神保町、秋葉原など坪1万5000円台の物件が残る地域でオフィスを探すベンチャーが増えつつある」(木幡氏)。

 木幡氏が「穴場」と指摘するのは岩本町駅周辺。路線は都営新宿線のみだが、神田川を挟んだ秋葉原駅まで徒歩わずか600メートル。「川を渡っただけで一気に家賃が安くなる。坪1万円代前半が相場」という。千代田区、台東区、中央区の境目にあり「所属する区によって、値段帯も異なるのでバリエーションが豊富。特に台東区は家賃が低い」。岩本町から近い神田駅も人気が高いという。

 実は飯田橋駅周辺も坪1万5000円台で探せる地域だ。トヨタ自動車の東京本社が近くにあるものの「オフィス街というイメージがあまりなく、オフィスビルの家賃は抑えめ」(木幡氏)。一方、JR、東京メトロ、都営地下鉄の路線が利用でき、交通の弁が良い。神楽坂方面に歩けば飲食店も豊富だ。

 渋谷へのアクセスが良い五反田と同じように、新宿への「衛星地区」として期待がかかるのが新宿御苑駅周辺。「新宿中心地より相場は半分。でも、中心地まで歩いて10分程度で行ける」(木幡氏)。

 こうした地域はオフィス向きの物件数がまだ少ない。水車による発電用水として使われていた目黒川があったため、企業文化が元々根付いていた五反田とは対照的だ。そのため、五反田のような集積地が生まれるというより、小規模ベンチャーが各地に分散していく可能性が高い。

 ヒトカラメディアの田久保氏はこう指摘する。「これまで、ベンチャーは自社のアグレッシブな雰囲気を示すために渋谷などの地名が名刺に載ることにこだわっていた。しかし、五反田がベンチャーの街に生まれ変わったことで、実用性を重視する企業が増えた。五反田のおかげで『地名ブランドの呪い』が解けた」。