日経ビジネス3/21号のスペシャルリポート「マイナス金利下の投信運用術」では、低リスクの運用商品が市場から姿を消していく中で、経験の浅い個人投資家がどう投資と向き合えばいいのかをまとめた。
では、個人投資家の運用手段の柱の一つになる投資信託を作る側は、いま何を考えているのだろうか。記者は業界大手、三井住友アセットマネジメントの横山邦男社長兼最高経営責任者(CEO)への取材を通じて、業界の変化の兆しを感じた。
1月末に日銀がマイナス金利の導入を決めたことで、個人投資家の資産運用がより難しくなる一方、金融機関側の販売姿勢も問われている。焦点の一つとなるのが、投資家が金融商品を購入する際に支払う手数料だ。
金融機関が顧客の意向を無視し、短期間に売買を繰り返させて手数料を稼ぐ手法は「回転売買」と呼ばれ、問題視する向きは昔からある。マイナス金利による運用難で苦しいのは金融機関も同じなので、「とにかく手数料を稼ぐ」という目標からこうした手法が再び増えるのでは、と懸念する声も出ている。
「親会社ばかりみていた」
一般的に投信を作るのは資産運用会社だ。ただ、日本の場合、そうした会社は大手銀行や証券会社のグループ傘下にある場合が多い。投信を販売する側の方がグループ内で立場が強いという構図になっている。そのため、販売側の論理に惑わされず、本当に顧客目線の投信が作れるのか、と指摘する声も出ている。そうした批判を、業界大手はどう受け止めているのか。

そこで業界大手の三井住友アセットを訪ねた。三井住友アセットは三井住友銀行が株式の4割を持っており、横山社長自身も同行の出身だ。
「この何十年もの間、いわば『メーカー』機能を持っている資産運用会社が下請けで、その下請け会社は親会社の意向ばかりを見てきました。その向こうにいるはずのお客様の意向は、残念ながら見ていなかったと思います」。回転売買やグループの親子関係など業界構造に関するテーマは聞かれたくないはずだが、取材に応じた横山社長の口から出てきたのは意外な言葉だった。
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