「謎解き」がふんだんに入った旅行

 「一言で言えば、旅行のストーリー性です。通常の旅行では、例えば日光ではこことここが見どころ、というお決まりの場所があり、そこを回るだけでは『点』の記憶になって、『旅』としての思い出があまり残らないのではないでしょうか。それに対して四季島の旅行は、上野を出て上野に戻るまでつながりがあるように作っているのです」と、JR東日本の鉄道事業本部営業部(びゅう・観光流動創造)トランスイート四季島プロジェクトの平松佑副課長は話す。

 つながりの例としては、例えば列車の中で提供される食事が、実は次に立ち寄る地域に何かしら関連しているというもの。また、最初から顧客には伝えないが、実は行程が外国人で初めて東北を北上して北海道に至る旅行をしたといわれる、英国人女性イザベラ・バードがたどった道と同じ、といった仕掛けがあるという。

 四季島を予約すると、「深遊探訪」という旅のしおりが届く。写真をふんだんに使い、旅行中に立ち寄る地域の情報が書かれている小冊子だ。顧客は旅行当日までにこれを読み込んでくるが、掲載された場所に行くわけではない。しかし、旅行中にここに書かれた内容に関連した食事や観光が用意されていて、「これはしおりに書いてあったものと関係しているのでは?」などと気づきがあるのだという。

 つまり、旅行を主体的に楽しもうとする人にとっては、頭を使う、まるで謎解きのような旅行になっているのだ。

 平松副課長は「我々は旅行商品の『びゅう』ブランドで30年間、沿線地域の観光開発をやってきたので、そこでの蓄積を生かして作り上げることができました」と説明する。

 JR九州の唐池会長によれば、ななつ星が好評を博している理由の一つは、参加者自身が旅を楽しもうとする気持ちが強いことにあるという。四季島も参加者は抽選で選ばれて数十万円を払う人であるし、期待感が強いはずだ。そうした顧客にとっては、謎解きのような旅はマッチするにちがいない。

 ストーリーがあって顧客に気づきを与える旅行──。旅行商品は、代金や設備、サービスなど目に見える部分に注目が集まりがちだが、こうした新しい切り口で顧客を楽しませようとする旅行が、今後のトレンドになっていくのかもしれない。四季島がその最先端を走っていくことを期待したい。