外資系ホテルが旅館を救う?

「アンバウンド コレクション」のロゴ

 「その人にとってのオリジナルな体験」「その国、土地でしかできない経験の提供」を宿泊施設に盛り込もうとするハイアットは今年3月に入ってもう1つ、新しいライフスタイル系のホテルブランドを発表した。「アンバウンド コレクション by Hyatt」だ。独自の個性や体験により唯一無二の魅力を兼ね備えたホテルや施設にて、ハイアットの快適なおもてなしや顧客サービスを受けられるというもの。つまり伝統的で歴史的な独立系ホテルや斬新な建築の新規開業ホテルがハイアットグループの一員となることで、顧客はより多様で個性豊かな宿泊施設へとアクセスできるようになる、というものだ。

 「アンバウンド コレクション by Hyatt」の仲間入りをした施設は現在世界で4つ。その中には「おばけが出るホテル」として有名なテキサス州のホテル「ザ・ドリスキル」や、1855年にナポレオン3世の命令によりパリ初のグランドホテルとして建築された「ホテル デュ ルーブル」などが含まれる。

 日本での展開はまだだが、阿部氏は「アンバウンドコレクションは日本の宿泊市場と非常に親和性が高いと考えている」と話す。規模が小さくとも個性豊かな歴史的建造物を使った旅館など、宿泊施設がたくさんあるからだ。こうした宿泊施設をコレクションで束ねれば、ハイアットのマーケティング力で外国人観光客への認知度が高まる。旅館が抱えていた運営の非効率性もハイアットのノウハウで打開できる可能性もある。

 日本の個性豊かな宿泊施設が外資系ホテルのコレクションに加えられる例は、これまでにも米マリオットが、2013年東京・品川の「ザ・プリンスさくらタワー東京」をオートグラフコレクションにしたり、米スターウッドが今年1月、7月に開業する「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」を「ラグジュアリーコレクション」に加えることを発表したりするなど、ここ数年加速している。外資系の運営ノウハウだけでは日本的魅力を外国人に対して創出するのは限界があり、より多様な宿泊施設を囲い込みたいとする意欲の表れといえよう。

 こういった動きを見ていると、冒頭に触れたように稼働率がホテルに対して低迷している旅館などの宿泊施設にも、外国人に対してまだまだ活路があるのではないかという気がしてくる。立地面や施設の老朽化といった問題はあるにせよ、日本的なエッセンスを兼ね備えたユニークな施設は多い。外資系ホテルがそのオリジナル性に着目し、ブラッシュアップをサポートすれば、日本の旅館業界も少しは元気になるのではないか――。ハイアットに代表されるホテル開業の傾向、そして外資系ホテルの近年の動きを見ると、そのような希望を個人的には抱かずにはいられないのだ。

 もちろん、外国人の観光需要はまだ「都市観光」が中心だ。都市の中心部に宿泊し、そこを拠点に街を観光したり、ビジネスに出かけたりするスタイルが依然主流である。そういった形態に旅館が弱いのは重々承知しているが、「日本を旅慣れた人」が増えれば増えるほど、旅館の優位性が高まるとも言える。外資系ホテルもそこに気づいてきており、他との差別を見出そうとしているのではないだろうか。