林業は「もうからない」と言われる。木材価格は1980年にピークを迎えた後、ヒノキが約4分の1、スギが約3分の1まで落ち込んでいる。背景には価格や物量で競争力を持つ輸入材に押されたこと、さらに木材需要そのものが住宅着工件数の減少などから下落を続けたことがある。

 だが、そうした長年に渡る逆境の中、林業経営でしっかり利益を出すことを追求しつづけている林業経営者たちがいる。

 その一人、岐阜県山県市にある極東森林開発の中原丈夫社長は「『林業はかつて儲かった。今は樹木を切るだけ損する』などといつまでも嘆いているのは『バブルの頃はよかった。崩壊して経営は厳しい』と言っているようなもの。それでは先に進めない。厳しい状況でも利益を出す方策はある」と明言する。

 こうした個性派の林業経営者たちを取材した。彼らの試みは厳しい市場環境にあるあらゆる業界で応用がきくはずだ。

たった1本の丸太をジャストインタイムで生産

 極東森林開発の中原社長は江戸時代、1731年から286年の歴史を持つ専業林家の9代目。岐阜県内に300ヘクタールの森林を所有し8人のチームで樹木を伐採し販売する。

 極東森林開発の特徴は、注文から3日以内に顧客の要望に応じた樹木を切り出せる「短納期」「ジャストインタイム」だ。さらには特殊注文材と呼ぶ、1本単位での注文も受け付ける「多品種・小ロット」の商品構成も取る。

 森林所有者は自ら樹木を伐採するか、作業を外部の事業者に委託して伐採してもらう。地域の森林組合を通じて、丸太の状態でセリにかけていく原木市場に持ち込んだり、住宅用の木材を作る製材工場に出荷したりする。当然、木材価格は上下する。タイミングが悪ければ、まとめて安く買いたたかれることもある。

 中原社長はこうした状況に疑問を持ち、どうしたら木材が高く安定して売れるか考えるため原木市場などで卸業者へのリサーチを開始した。そこで見えてきたのは生産者視点と消費者視点の違いだ。

林業の「見える化」を進めてきた極東森林開発の中原丈夫社長(写真:堀 勝志古)

 「林業家は自分たちのペースで樹木を切る。『そろそろあの斜面を切るか』という具合だ。そして切り出した丸太を市場に持ち込む。仮に『1カ月以内にこの太さのスギが100本、ヒノキが100本ほしい』などと要望があっても『まあ、切ってみないとなんともいえないけど、1カ月したら連絡するよ』という具合。そして実際には必要な丸太が揃っておらず『ある程度まとまるのはまた1カ月後だからそのころ来てくれ』という始末。これでは高く売れないのは当たり前だ」(中原社長)