イトキンが実施する第三者割当増資をインテグラルは約45億円で引き受け、さらに創業家である辻村氏とその一族を中心とする既存株主から株式譲渡を受けた。これにより、現在ではインテグラルがイトキン株式の約98%を保有することになる。

再建はできても、勢いは取り戻せない?

 今後インテグラルは3~5年でイトキンを立て直す計画だ。「IPO(新規株式公開)や株式持ち合いを目的に主要取引先に株式を持ってもらうなど、様々な方法を検討し、投資家やイトキン双方にとって一番良い資本政策を検討したい」とインテグラルの山本氏は語る。

 数年後に企業価値を2~3倍にして株式を売却することができれば、ファンドとして再建に乗り出す意味は十分にあるだろう。だが、仮に一定の企業規模まで再建できたとしても、「その先、イトキンが勢いあるアパレルメーカーになるのかは未知数」と大手アパレルの元首脳は首をかしげる。

 例えば、今後イトキンが強化するとしたSCへの出店。関係者の資料を基に2015年の実績を見てみると、坪効率が高いのは軒並みSPA(製造小売業)系のアパレルメーカーだ。一方で、百貨店などを中心に展開してきた既存アパレルメーカーはみな坪効率が悪い。

 百貨店を中心に展開してきたアパレルメーカーの場合、SPA系に比べると、人件費などのコストが重く、この体制のままでSCに出店しても、利益を生み出しづらいのだという。

 「単に挑戦していない販路に出れば解決策になるかと言えば、そんなに簡単な話ではない」(先の大手アパレル元首脳)。仮にSCに大量出店したとしても、稼げなければ賃料の条件は悪くなる一方だし、最悪の場合、退店を迫られる可能性もある。単純にSC強化が再建の「解」とは言えないというのだ。

 SCそのものも、日本国内ではモールごとの優勝劣敗の格差が大きくなりつつある。単にSCに出たからといって、人の集まらない「負け組」に出店するようでは意味がない。

 また、辺見パートナーが語った「数十億円規模のブランドが多数あること」が、必ずしも強みになるとも言えないのだという。百貨店でより有利な場所に売り場を構えるには、アパレル側が百貨店側に対して強い発言力を持たなくてはならない。それは何かというと、売れるブランドを持つことだ。だが「100億円規模のブランドがなければ、百貨店に対する発言権は強くならない」(大手アパレル元首脳)そうだ。

 確かに「シビラ」などイトキンの保有するいくつかのブランドは百貨店でも好調のようだ。だが、より売り上げを伸ばすべくもっと広い売り場を求めるには、百貨店側と交渉しなくてはならない。だが売り場の一等地は、既にオンワード樫山やワールド、三陽商会といったライバルが全力で守っている。メガブランドを押しのけてまで「シビラ」など、イトキンのブランドが有利な場所を確保できるかというと難しいのではないかという。

 業界関係者の多くは、イトキンの保有するブランドの「弱さ」を指摘する。数十億円規模のコアなファンを持つブランドはあるが、この先100億円規模に育てられる勢いのある旬のブランドがあるわけではない。アパレル業界で今、好調なのは、アダストリアやユナイテッドアローズ、ビームス、パル、バロックジャパンやアーバンリサーチなど、セレクトショップ系やSPA系の企業が展開するブランドが中心だ。ここにイトキンの保有するブランドの名前は入っていない。「体力が整った段階で、好調なブランドを傘下に収めて、次の成長の原動力にした方が良いのではないか」。こういった解決策を提案する関係者も多い。

 イトキンは再建できるのか――。この問いに対する解はイエスでもありノーでもある。ファンドの立場で見れば、構造改革を進めることで再び一定の利益を生み出せる企業にはなるだろう。だがアパレル関係者が考えるような「旬の企業」になるかというと、なかなか道は険しそうだ。

 創業家の辻村氏は、イトキンという社名や従業員を守りたいと考えて、経営から手を引く決断を下した。その思いの通り、「イトキン」はこの先も存続する。だが旬の企業として再び輝きを取り戻そうとするならば、今の再建策とはまた違う、何らかの「解」が必要になるのだろう。

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