民主党と維新の党が3月に合流することが決まった。衆参両院で計150人規模の野党第1党になる。
両党は新たな党名や政策などの調整を急ぐとともに、ほかの野党にも合流を呼びかけるなど野党勢力の結集を図る構えだ。
維新との合流に合意した、民主党の岡田克也代表(写真:アフロ)
「今回の新党が最後だ」
両党の協議は合流方法を巡る溝から難航し、破談もささやかれていた。
民主の岡田克也代表と維新の松野頼久代表が最終的に合流へと踏み込んだのは、夏の参院選にあわせて衆院選を行う衆参同日選も取りざたされる中、「野党がバラバラのままでは巨大与党に対抗できない」(民主党幹部)との危機感からだ。
「今までの民主党は国民の期待に応えられなかった。今回の新党が最後だ。必ず政権交代の受け皿になる」。岡田氏は強い口調で意気込みを語る。
岡田氏は「野合で何が悪いんだという開き直りの気持ちもある」とも話し、なりふり構わず野党結集を目指す考えを強調している。
民主、維新両党は夏の参院選に向け、安全保障関連法の廃止などを旗頭に共産、社民、生活の各党と選挙協力することで合意済みだ。共産は勝敗を左右する1人区の公認候補を取り下げる方針を決めている。
下野から3年余り。政権交代可能な2大政党制の再構築を目指す岡田氏はほかの野党や無所属議員への働きかけを加速させる考えだ。生活の党や無所属議員の取り込みが有力視されている。
だが、先行きには不透明感が漂う。日本経済新聞社が2月26~28日に実施した世論調査では、新党に「期待する」との回答が25%にとどまり「期待しない」の64%を大幅に下回った。民維の支持率も横ばいで、有権者の間では民維新党に対する冷ややかな見方が広がっている。
民維新党への期待が高まっていない理由の1つが、「どうせまた、党内がゴタゴタするのでは?」との根深い疑念だろう。
「政権交代」の一点で実現した民主党政権がその後、内紛続きで自滅したことは記憶に新しい。基本政策の不一致や党内を統治する能力の欠如がその主因だった。
寄り合い所帯に波乱要因が加わる
松野氏ら民主と合流する維新の衆院議員の約半数がかつて、消費増税など政策の不一致を理由に民主を離党した面々だ。
出戻る理由が十分に説明されていないうえ、ただでさえ寄り合い所帯の民主に波乱要因が加わるのは間違いない。
「すぐに足の引っ張り合いをするだけだと有権者は見透かしている」と自民党のベテラン議員は指摘する。
こうした見方を裏付けるかのように、合流を前に民主、維新両党のつばぜり合いが早くもヒートアップしている。まったく新しい党名でイメージを変えたい維新側に対し、民主のベテラン議員らが「民主の文言は譲れない」と主張するなど、調整は難航必至だ。
民維新党が何を目指し、今の安倍晋三政権と何が違うのか、よく分からない点も大きい。
「共生社会、多様性を認める社会が我々の目指す方向だ」。こう語る岡田氏は民主が提唱してきた正規雇用と非正規の格差是正や、子どもの貧困解消などを引き続き看板政策に掲げる意向を示す。
だが、安倍首相は参院選を見据え、「介護離職ゼロ」や「同一労働同一賃金」の実現など民主のお株を奪うような政策領域にウイングを広げ、争点をあいまいにする戦術を鮮明にしている。これまでの主張を繰り返すだけでは、安倍政権との違いは打ち出しづらい。
現在の民主ですら、憲法改正や安全保障政策などを巡る温度差が内在している。
そこに、かつて民主を見限ったり、労働組合への依存体質を批判したりした維新議員が加わることで、党内調整はさらに複雑なものになる。
「政策は後回し」を皮肉る安倍首相
党内バランスを優先すれば、結局は改革姿勢や、明快なメッセージを発信しづらくなるというジレンマに直面しかねないのだ。
「政党は名前とかではなく、理念と政策を持っているか、信頼にこたえて実行していくかが問われる」
基本理念や政策のすり合わせを後回しにした合流決定に対し、安倍首相は国会答弁でこう皮肉って見せた。
党名を変えるにせよ、民維新党に「新しさ」を感じられない点も盛り上がりを欠く要因だろう。
民主、維新両党の党首会談では、岡田氏が合流後の党首を暫定的に務め、夏の参院選後に代表選を行うことで合意した。
だが、民主の中堅・若手議員からは「党の刷新を印象付けるため、合流時に代表選を行うべきだ」といった意見も相次いでいる。
安倍首相が衆参同日選に踏み切る可能性もあり、「政権選択選挙を戦う党の顔が岡田氏でいいのか」との不満もくすぶっている。
岡田氏や民主の現執行部は参院選で議席を上積みし、成果を訴えることで代表続投を狙うシナリオを描く。
仮に思惑通りに事が運ぶ場合でも、衆院選をにらみ、「ポスト岡田」候補を積極的に要職に起用するなど新党の将来を見据えた対応を強化しないと、期待の底上げは難しいだろう。
民主のベテラン議員は「自民はポスト安倍が見当たらない。こちらには人材が豊富だというメッセージを発信していくべきだ」と訴える。
政権奪還を目指すなら、党組織の立て直しや官僚との関係構築、経済界との意見交換など地道な作業も着実に進めなければならない。
「再び政権に戻ったら、同じ失敗は繰り返さない」と語る民主議員は多い。だが、政策作りなどで各省庁などの専門知識や経験を活用せず、政治家同士だけで協議する従来型の手法にこだわる場面が少なくない。
参院選まで約4カ月。経済運営、外交・安全保障など主要政策について、実現可能で明快な対立軸を示し、刷新イメージを積極的に打ち出すことができるか。新党や野党結集への支持を広げていくには課題が山積している。
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