アップルCEOは子供のテクノロジー利用に警鐘
もう1つ重要なテーマは忍耐力だろう。以前から指摘されているが、忍耐力がなく目の前の楽しみに身を委ねる子供が増えているようだ。多くの楽しみを提供するスマートフォンなどデジタル機器の普及で、その傾向が加速しているのかもしれない。

我慢しなくてもいいじゃないかという考え方もあるだろう。興味の赴くままにデジタル機器をいじり続けることで、様々なスキルを身に付けるのかもしれない。優秀な子供は適度に自制しながら、デジタルネイティブとして新たなサービスを生み出すのかもしれないが、私が子供だったら一日中、スマホをいじって怠惰に過ごしてしまいそうだ。
米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、自身の子供に対してデジタル機器の使用を制限していたという逸話がある。最近でもアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が「おいにはソーシャルネットワークを使ってほしくない」と発言し、講演でテクノロジーの過度な使用に警鐘を鳴らしたという。AIの普及によって様々なサービスがますます便利になり、我慢する必要がなくなっていきそうだ。
極端な事例かもしれないが、中学時代を振り返ると、暴れる生徒は家庭で親が我慢をさせていなかったと聞く。私が通っていた学校は、非常に荒れていた。クラスと同じ階のトイレは窓ガラスだけでなく、壁も便器もすべて破壊され、トイレという空間に給排水の穴しかなかった。
体育で荷物を教室に置いていくと物を盗まれたり、弁当を食べられたりするので、荷物を常に見えるところに置いていた。真冬でも外で着替えをして、この季節は寒かったことを思い出す。荒れていた生徒たちは、学校でも暴力や盗みを我慢できなかったようだ。
しかし今、忍耐力が必要なのは、子供だけなのだろうか。大人にこそ問題がありそうだ。我々はデジタル機器とサービスの高度化によって、我慢することが難しくなっている。特にコミュニケーション手段の発達によって、以前より何かを待てなくなっているように感じる。
過保護にならないためには、子供の特性を見極めると同時に、子供に手だし口出しをせず、見守らないといけない。我慢して待つことが求められる。
アイリスオーヤマの大山社長はこう話した。「親や教師が子供に『転ばぬ先の杖』を与えると、そればかりに頼るようになり、チャレンジする気持ちが失せてしまう」。
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