
原油価格の低迷が世界経済を揺さぶり続けている。
サウジアラビアとロシア、ベネズエラ、カタールの4カ国が16日、原油の増産を凍結することで合意し、原油先物の指標、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が、1バレル30ドル台に上がると、米ダウ工業株30種平均は前日比で約1.6%上昇した。
ところが、当のサウジのアリ・ヌアイミ石油鉱物資源相が23日になって、減産について「産油国で約束しても守られない」「時間の無駄」と発言したと伝わると、WTIは前日比4.6%安と大きく下げ、ダウも同1.1%下落した。

産油国の経済縮小リスクに懸念
市場が恐れるのは、原油価格の下落が次なるリスクを膨れ上がらせるからだ。既に中東最大の産油国であるサウジは2016年に財政赤字(予算ベース)が約891億ドル(約9兆9000億円)と、前年の約2倍に急増する見込み。
潤沢な資産を抱えるサウジがすぐに危機に陥るようなことはないが、輸出の多くを原油に頼るアルジェリアやナイジェリア、ベネズエラなどは経済の縮小に直面している。ベネズエラはもはや対外債務が債務不履行(デフォルト)になる懸念すら広がっている。
産油国の経済危機は、資金の貸し手の先進国に飛び火しかねないし、先進国も米国などでは原油採掘業者の一部に破綻も広がっている。原油価格がさらに下がり、低迷を続ければ、世界経済が信用秩序から大揺れする恐れさえあるのだ。
米国がサウジを離れ、イランへ接近?
2014年半ばから1年半以上に及ぶ原油価格の下落はなぜ、終わらないのか。理由は既に明白である。1に中国の景気減速による需要の伸び悩み、2に米国のシェールオイルの生産増、3には、サウジなど主要産油国がシェア維持のために減産しようとしないことなど。つまりは需給バランスが完全に崩れたというわけだ。
しかし、本当にそれだけなのか。地政学という角度から眺めてみると、その背景に別の大きなうねりと、それが原油市場を動かしている構図が浮かぶ。中心にいるのは、当然のように米国である。
大胆に言えば、米国はここ数年、中東の同盟国、サウジとイスラエルからじりじりと“離れ”、天敵だったはずのイランに近づいている。それが具体的な形をとったのが、米国と欧州連合(EU)が今年1月半ば、イランに対する経済制裁の解除を決めたこと。欧米は、これまでイランが核開発を続けているとして、対イランの経済活動の停止など経済制裁をしてきた。だが、ウラン濃縮の制限などをイランが受け入れたことで制裁は解除され、国際経済への復帰が決まったのである。
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