東急電鉄の野本弘文社長は、ネット時代に対応し組織体系を「楕円型」に改めた(写真:都築雅人)
東急電鉄の野本弘文社長は、ネット時代に対応し組織体系を「楕円型」に改めた(写真:都築雅人)

 東急電鉄が新たに作り上げた楕円型の組織は、東急電鉄を核に位置付け、周辺にグループ企業を配する。これにより、東急電鉄と各グループ会社の距離を縮めることに成功した。グループ各社が東急電鉄を介さずに、直接連絡・情報共有もできる仕組みを整えた。

 だが、これでは中核の東急電鉄に情報が入りにくくなり、グループ経営に支障をきたすのでは――。私はそう懸念したが、野本弘文社長は「グループ会社同士で直接やり取りしてもらって全然構わない、それがインターネット時代の組織論だ」と話した。

情報分析・対応のスピードを上げる

 野本社長の主張はこうだ。ネット時代になると、世の中のあらゆる情報がほぼ同時に出回る。その中で他社との競争に打ち勝って成長を続けるには、手にした情報をいかに早く分析して、適切な対策を講じるかに尽きる。そのためには、分析や対応策をいちいち親会社を介してグループ会社で伝えあっていては出遅れる。時には親会社も通さず、縦横無尽に連絡を取り合って物事を進めてほしい――。

 東急グループという楕円を広げて全体の成長につなげるためには、円周に位置するグループ会社の役割も重要。東急電鉄は、時にそれらをサポートする立場も担うという理屈だ。

 こうした組織論になったのは、野本社長自身の経歴によるところが大きいだろう。グループとしてネット接続サービスを始めた1990年代から担当部署に籍を置き、ケーブルテレビ大手、イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)社長として経営再建を果たすまで、10年以上にわたりネット関連事業に携わった。ネットの普及がもたらす時代の変化をグループの誰よりも実感し、それに対応した適切な手を打つ必要性を感じていたのだろう。

 楕円型経営は着実に成果を上げつつある。東急ストアでは東急百貨店のバイヤーが選んだ高価格帯ワインの専用コーナーを用意。イッツコムでは電力小売り会社、東急パワーサプライの電気サービスとのセット利用で、各種サービスの月々の利用料金を引き下げるサービスを始めた。店舗での売り上げや、契約数の伸びという形で表れてきている。東急グループでは今後も様々な連携策を打ち出そうとしている。

 創業90年を過ぎ連結売上高で1兆円を超えるなど、歴史と規模を兼ね備えた東急電鉄を中核とする、東急グループの大胆な経営転換。この取り組みは他の企業でも大いに参考になり得るだろう。

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