量は減らすが付加価値は上げる

 その答えが、平田社長が進める「社員の仕事を減らす」ということだと記者は感じた。

 ただし、売上高を落とさないためには、ある条件をクリアしなければならない。「仕事1件当たりに得られる対価を上げる」ということだ。記者の仕事で言えば「記事1本の付加価値(値段)を上げる」こと、平田機工の仕事で言えば「設計図1枚の付加価値(値段)を上げる」こととなる。

 「そんなこと、できるならとうの昔にやっていた!」というツッコミが聞こえてきそうだが、平田社長の取り組みの本質はまさにそこにある。

働き方改革を進めるのは社員ではなく経営者

 平田機工はこれまで一貫して、「顧客が喜ぶ仕事」にトコトンこだわるよう社員を教育してきた。顧客が喜ぶ仕事とは、「お客様の工場で、効率よく、不具合なく高品質な製品を製造できる生産ラインを作ること」(平田社長)だ。

 ところが、そんな仕事ができる設計者を育てるのには、相応の時間がかかるのは言うまでもない。時間をかけたとしても、ただルーチンワークをやらせているだけではダメだ。普通の設計者なら根を上げてしまいそうな難しい課題を与え続け、頭と心を鍛え上げる必要がある。

 一人前の設計者を効率よく育てる方法が、仕事の件数を減らすことだった。受注件数を減らす一方、競合他社が難しいからと引き受けたがらない仕事を率先して受け、仕事の付加価値を上げた。

 すると、常に難しい案件にチャレンジして鍛えられた設計者は、さらに難しい仕事を請け負えるようになり、会社の競争力も上がって売上高が拡大した。すると、付加価値の高い仕事がより一層、平田機工に集まってくるようになり、さらに設計者は鍛えられ……という好循環が生まれた。

 社員の仕事を減らす(高付加価値案件にシフトする)ことができるのは、経営者しかいない。働き方改革を本当の意味で推進できるのは、社員ではなく経営者の方ではないだろうか。