技術者の仕事を減らすと会社が儲かる?

 まず平田社長が目標の一つに据えているのが、生産ラインを設計・製造する各種エンジニアの仕事量の削減だ。「仕事量」と言っても漠然としていて見えないので、平田社長は「生産ラインの元となる設計図の枚数」とした。

 普通に考えれば、設計図の枚数が減れば、それだけ会社としての売上高も減ることになる。ところがそうはならなかった。取り組みの結果、2016年3月期の設計図の枚数は2014年3月期に比べて25%削減できたが、売上高は逆に13%増加した。

 なぜこんなことが起きたのか。そのカラクリは、少し冷静になって考えてみると分かる。

 たね明かしをする前に、まず一般的な企業が働き方改革をすると、結果として売上高が下がるカラクリについて考えてみる。

知識集約型の仕事ほど働き方改革は機能しない

 記者の仕事を例に取る。ある記者が1本の記事を書くのに平均4時間かかっていたとしよう(実際には取材したり記事の構成を考えたりする時間も必要になるが、ここでは話が複雑になるので除外する)。この記者が1日に書ける記事の本数は、単純計算で2本。これ以上はどう頑張っても書けない。

 無理をすれば3本、書けるかもしれないが、慌てて書くので自ずと品質は下がる。間違いが生じれば後で修正が必要になり、後工程(記事をチェックするデスクや、記事をレイアウトに流し込む制作担当者など)に余計な負荷をかけることになる。

 これは平田機工のようなメーカーで働く設計者も同じだ。無理に量産して設計図の品質が落ちるようなことになれば、後工程である製造工場で作ったモノにも不具合が生じ、作り直し(場合によっては設計変更)が必要になる。顧客にも迷惑がかかるので、長期的に見れば顧客の減少、すなわち売上高の縮小につながる。

 記者や設計者のような知識集約型、かつ上流工程での品質の作り込みが商品そのものの品質に大きな影響を与える仕事であればあるほど、この傾向は顕著になる。経営者が「短い時間で多くの仕事をしろ」と言ったところで、結果的に何の生産性向上にもつながらないという悲しい結果を招きかねない。

 ではそこに解はないのかというと、ある。