いろいろなタイプのますますくん。岐阜県の山奥出身です
世界経済への不安が高まる昨今。来たるべきリベンジの時を見据え、ひたすら牙を研ぐ一人の男(?)がいる。日本郵政グループの元祖ゆるキャラ「ますますくん」だ。2005年、日本郵政公社(現・日本郵政グループ)が投資信託販売を始めるのに際し、マスコットキャラクターとして誕生した。つぶらな瞳と、すらりと伸びた手足が特徴だ。現在はゆうちょ銀行に所属し、投信販売を象徴するゆるキャラとなっている。
当時、郵政公社は新たな収益源として、他社が組成した投信の販売に力を入れており、ますますくんも各地のイベントに引っ張りだこだった。だが、開始当初は順調だった郵便局での投信販売も、2008年のリーマンショックで急減速。その象徴だったますますくんは「戦犯」として表舞台から姿を消した。詳細は2015年7月27日の日経ビジネスオンライン「悲劇のゆるキャラ、『ますますくん』の復権なるか?」を読んでほしい。
ますますくんが姿を消してから10年近く。このまま日の目を見ることなく一生を終えるかと思われていたが、再びスポットライトが当たろうとしている。ゆうちょ銀が日本郵便、三井住友信託銀行、野村ホールディングスと共同で資産運用会社「JP投信」を立ち上げ、2月22日からオリジナルの投信を全国の郵便局やゆうちょ銀の直営店、計約1500カ所で販売するのだ。
ますますくんが再び表舞台に立つ。記者はこの日を待ち望んでいた。苦渋の時期を耐えてきたますますくんも奮い立ったに違いない。
マイナス金利で嫌な予感的中
しかし、やはり世間は厳しい。1月29日、日銀がマイナス金利の導入を決定。金利が急低下して利回りが確保できなくなり、主に公社債などで運用する低リスク投信のMMF(マネー・マネージメント・ファンド)などが募集停止となった。
実はこの時、記者は嫌な予感がしていた。「JP投信が発売する新商品のラインナップの中に、日米の国債に投資する投信があったよな…」。予感は的中。2月15日、一部投信の発売中止が発表されたのだ。
捲土重来のタイミングでまさかの逆風に、ますますくんも自らの運命を呪ったかも知れない。しかし、マイナス金利導入で預貯金の金利や低リスクの運用商品がほぼ消滅し、個人マネーは安定した運用先を求めてさまよっている。郵便局オリジナル投信が目指す「低リスクで分かりやすい運用」に対する個人投資家の期待は高まっているとの見方もできそうだ。
リーマンショック時の痛手から郵便局関係者の間でトラウマになっているとも言われる投信販売。再出発が成功するためには、「逆風の時期に耐えてどれだけ地道に続けられるか」という点が重要になると思う。
郵便局は全国に2万4000局あり、メガバンクや大手証券会社を遥かに上回るネットワークを持つ。投信の取り扱い局をさらに増やし、販売後にきめ細やかなケアを続けて顧客との信頼関係を築ければ、「貯蓄から投資へ」の流れを本格的に後押しするきっかけにもなる。ますますくんの戦いはこれからだ。
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