中国の春節休暇が15日から始まった。中国観光研究院などの調査によれば、この時期に650万人もの中国人が海外旅行に出かけるという。中でも人気なのは東南アジア。1位のタイを筆頭に、シンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが人気旅行先の上位に名を連ねている。

 タイの首都バンコクは中国人旅行客を迎えるのに余念がない。筆者の自宅近くにあるホテルの正面玄関には「新年快楽!(明けましておめでとう!)」の文字が電飾付きで大きく飾られ、ホテルロビーは中国語が飛び交う。隣にあるショッピングセンターでは中国の圧歳銭(お年玉)をイメージした巨大硬貨のオブジェが登場。宿泊客はここでタイ料理や中華料理に舌鼓を打っていた。

中国の春節に合わせてバンコクのショッピングセンター前に登場したオブジェと屋台街

進む中国のアジア「一路」計画

 東南アジアと中国との結びつきはもともと強い。特にタイやインドネシア、マレーシアなどは中国にルーツを持つ華人や華僑と呼ばれる人々が多く居住し、各国経済に重要な役割を果たしてきた。その距離は今後ますます近くなっていくだろう。東南アジアは中国が提唱する巨大な経済圏構想「一帯一路」のうち「一路」の要衝にあるからだ。

 中国が絡む大規模なインフラ開発計画が東南アジア各国にはいくつもある。中国からラオスの首都ビエンチャンをつなぐ高速鉄道の建設が進んでおり、昨年末には中国が協力するタイの高速鉄道プロジェクトが起工式を迎えた。この鉄道はラオスの鉄道と接続し、最終的には中国まで通貫する計画がある。

 ミャンマーでは昨年、同国西部にあるチャオピューと、中国雲南省の昆明とを結ぶ原油パイプラインが稼働した。これによりマラッカ海峡や東シナ海を経由しなくても中国は中東産の原油を輸入できるようになった。加えてこの地域では中国主導で深海港や工業団地の建設が進む。

 今年1月にはタイやカンボジアなどメコン川流域の5カ国がカンボジアの首都プノンペンで首脳会議を開き、メコン流域各国のインフラ開発や人材育成ついて中国が積極的に協力していく方針が示されている。

求められるカウンターとしての役割

 日本にとっても東南アジアは生産拠点としても市場としても重要だ。そこで中国が日に日に存在感を高めていると聞くと、いずれ各国で中国勢が支配的な地位を占めるようになるのではないかと、つい中国脅威論に傾きそうになる。

 もっとも、この地域での日本と中国、そして東南アジア各国との関係はそう単純でもなさそうだ。