現場の僧侶に意外な反応

 では現場の僧侶の意見はどうだろう。全国の30代~40代の若手僧侶6人に集まってもらい、お坊さん便の是非について意見交換する機会があった。結果、お坊さん便に「賛成」が2人、「どちらともいえない」が4人、明確に反対の立場を取った僧侶はゼロだった。その一部の発言を紹介しよう。

 「うちの寺は過疎地にある。地方に出ていった檀家を追いかけてつなぎ止める立場だ。ネットという手段でも、新たなつながりができればいいと思う。だがどこか寂しさ、空しさはある」(北海道在住の住職)

 「もはや菩提寺や墓は自分の代で守れなくなる、という人が多発している現実がある。お坊さん便のような受け皿が存在することはいいことだと思う。その点、新宗教はそうした受け皿を熱心につくって勢力を拡大してきた。一方で既存仏教は伝統にしばられ、"頼れない存在"になってきたのだと思う。我々も反省が必要だ」(大阪府在住の副住職)

 「時代の流れ、社会の要請があり、こうしたビジネスが受け入れられているのは事実。しかし、宗教行為が完全にビジネスに成り代ってしまうことには危惧を覚える」(東京都在住の副住職)

 「金額が提示されている段階で、それは完全にビジネスだということ。宗教行為とは言えない。そもそも経を読むだけが僧侶の役割ではなく、むしろ法を説き、心のケアに務めることのほうが大事。そうした本来の宗教行為がこのサービスで担保されているのか疑問」(東京都在住の副住職)

 「電車の網棚にワザと骨壺を置き忘れたりする時代だ。このサービスはもろ手を挙げて賛成する立場ではないが、ネットを通じてでも供養しようと思う人がいるのは、まだ救いだ」(長野県在住の副住職)

 現場の僧侶ですら、見解が分かれている。宗教行為の商業化についての是非を論じるのはとても難しいし、賛成と反対の立場が議論しても、お互い理解し合えるとも思えない。

 ひとつ言えることは、宗教行為が善であり、商業行為が悪であるという決めつけは危険だということ。その逆は、もっと危険かもしれない。

 なぜ、このようなサービスが現代に登場したのか。翻れば、お坊さんを必要としていることの表れではないか。僧侶たちはこのシグナルを、敏感に察知し、人々に受け入れられるような体制づくりをしていかなければ、日本の仏教に未来はない。

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