DSLNGの基地内の様子(写真:DSLNG提供)
DSLNGの基地内の様子(写真:DSLNG提供)

 状況を大きく変えたのは、シェールガスの登場だ。

 2008年ごろからシェールガスが注目され始めたことにより、中小規模のガス田開発の必要性は減ってしまった。それよりも、北米でのシェールガス開発の方が優先されるようになってしまったのだ。

 だが、ジャカルタで会ったDSLNGの川端COOの言葉は意外だった。「まずはここでの操業を続けつつ、その間に、この経験をどう生かせるか改めて考えていくだけ。資源市況は目まぐるしく変わるから」。さばさばした表情で、こう語った。

 強がりにも聞こえて、思わず失礼な質問が出てしまう。「せっかく時間をかけて売り込んで、大きなリスクを取って挑戦して得たノウハウを、今後の事業展開に生かせないかもしれないのは、もったいないと思わないですか」。

「チャレンジの姿勢を忘れたら商社は終わり」

 だが、この質問にも川端COOは動じない。「どう生かせるのかまだ分からなくても、少なくとも石油メジャーに頼らずに自分たちだけでできることを増やせたのは正解だった。プロジェクトの売り込みで、何らかの形で有利になるのは確か。常にチャレンジしていく姿勢を忘れたら、商社は終わりだから」。何の迷いもない言葉が返ってきた。月に2回、川端COOはジャカルタからスラウェシ島のLNG基地へ出張を繰り返している。顧客向けに品質の高いLNGがきちんと出荷できているかなどを打ち合わせしながらチェックしているようだが、この行動力もすごい。

 この取材は、日経ビジネス2月1日号の巻頭特集「普通の会社はやってない 凄い売り方」の一環だった。

 古くは手数料ビジネスで稼ぎ、時代の変遷とともに資源やインフラ開発プロジェクトなどの事業投資で稼ぐモデルへと転換してきた日本の商社(参照記事:三井物産が世界で“港づくり”を売る理由)。過去に何度も唱えられた商社不要論をはねのけながら、成長を続けてきた。

 足元では資源安により大手商社の減損発表が相次いでいる。が、モノからプロジェクトへ売り込む対象が変わっても、商社マンの営業力と行動力は健在のようだ。「常にトライ&エラー。何が起こるか分からないけれど、何かをやり続けなければ死んじゃうつもりでやっている。現状に安住しているのが一番危ない」。取材後にエレベーターホールまで送ってくれた川端COOが自分に言い聞かせるように言っていた言葉は特に印象的だった。

 市場の成熟や構造不況など、売れない理由をあげればきりがない。日本は技術力や品質管理に優れた「モノ作り」の国と称されることも多い。だが、そこにあぐらをかいて、モノ作りに比べ、営業や、売り込むための行為を軽視している面があったのかもしれない。

 いい製品を作っただけでは売れない時代なのだから、いいモノを作るのと同じくらいの本気度で、モノやサービス、プロジェクトなど何でも貪欲に「売る」ことの大切さを、改めて考えてみるのは重要かもしれない。アジアの辺境、インドネシアで奮闘する商社マンの言葉は、多くの示唆をもたらしてくれた。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。