決算情報がネットにアップされた2分後に、日経電子版には業績ニュースが大量にアップされる。一つの部署が総力で対応しても、この処理能力にはとうてい及ばない。

ROUND2 14時 IHI

 今度は、事前にIHIの過去のニュースや決算発表を調べ、予定原稿を10分程度で用意した。IHIは1月23日に損失計上を発表している。ほんの1週間では大きく変わらないだろう。あとは数値だけを用意すればよい状態だった。

 14時に決算短信がアップされた。

 IHIは1日、2016年4~12月期の連結最終損益が91億円の赤字(前期同期は342億円の赤字)だったと発表した。北米で手がける工事で費用が想定より膨らむことに加え、創薬関連の関係会社で引当金を計上する。売上高は前年同期比2%減の1兆38億円だった。航空エンジン事業は世界的な需要拡大を受け好調だったものの、エネルギー関連施設工事などの採算悪化を補いきれなかった。

 こちらは14時2分に書き上がった人間記者の原稿。これに対しAIの原稿は…

2016年4~12月期の連結決算は、最終損益が91億円の赤字(前年同期は342億円の赤字)となった。売上高は前年同期比1.9%減の1兆382億円、経常利益は前年同期比347.1%増の87億円、営業利益は前年同期比251.1%増の194億円だった。

(2017年2月1日、日本経済新聞電子版「IHIの16年4~12月期、最終損益91億円の赤字

 売上高と利益項目を書き並べただけで、業績の分析は出来ていない。人間側の勝ちと言えるだろう。ただ、予定原稿作りに10分を要しているため勝利の実感は薄い。

ROUND3 15時 カシオ計算機

 今回は予定原稿を作らず、事前にカシオの過去業績を分析するのみ。カシオの利益水準は昨年大きく減少したという情報を頭に入れる。そして15時ちょうど、アップされた決算短信を見ると…、人間記者の手は凍り付いた。何を書いて良いのかがわからない。

 カシオが発表した2016年4~12月期の連結決算は、純利益が前年同期比57%減と急速なペースダウン。しかし、決算短信には「時計は最強ブランドである『G-SHOCK』の高価格ラインアップ拡充で好調に推移」「電卓は学校販売強化により関数電卓が好調に推移」、など良い点しか書かれていない。

 減益の理由となったマイナスポイントを探そうにも見つからない。企業は良い点ばかりを書いて、悪い点を隠しがち。その典型となる開示資料だった。決算短信と10分間にらめっこして、人間記者は何も書けずに結局ギブアップした。

 気になるAIの記事はというと…、

4~12月期の連結決算は、純利益が前年同期比57.1%減の106億円となった。売上高は前年同期比11.2%減の2325億円、経常利益は前年同期比55.9%減の147億円、営業利益は前年同期比39.1%減の203億円だった。

(2017年2月1日、日本経済新聞電子版「カシオ計算機の16年4~12月期、純利益57.1%減106億円」

 こちらも業績の数値情報を書き並べるだけで、カシオの減益理由については触れていない。これは引き分けと言って良いだろう。