米国では倒産事例も

 一方、簡単に解決できない家事代行サービス特有の課題も横たわる。それはヘルパーの引き抜きを前提とした離脱だ。家事代行は定期的に依頼をすることが多い。一度「良い人」が見つかれば、その人に常にお願いしたいと考えることは普通だろう。つまり、ある段階で良い人が見つかってしまえば、そのプラットフォームから離脱し、直接連絡を取り合い、家事を依頼することができてしまう。

 当然、各社はこうした直接交渉を利用規約で禁止するなど対応策を講じているが、その後サービスを使わないとすればサービス内の利用規約が直接交渉の抑止には必ずしもつながらないだろう

 一般的に、サービスプラットフォームは一定の仲介料を取る。この仲介料がなくなれば、ホームヘルパー側にとっては利用者から“真水”の利用料をもらえ、一方利用者側は仲介料を支払わなくてよいため利用料を安くできる可能性がある。

 インターネットでのマッチングサービスは数多くあるが、このリスクは家事代行サービスに顕著に見られるとも言える。例えば、タクシー配車サービスの「UBER」は「定期的に」「同じ人に」という要望より「今すぐ行きたい場所に運んで欲しい」というニーズの方が高い。自宅を宿泊場所として提供するAirbnbは、同じ場所に何度も宿泊することは少ない。ほかにも最近増えているシッターサービスでは、もちろん「いつもの人にお願いしたい」というニーズは高いものの、例えば、子どもが風邪を引いたときなどは「とにかく誰かにあずけなくては」というニーズの方が高くなる。

 掃除においても「とにかく誰でもいいから今すぐ片付けて欲しい」というニーズは当然あるだろう。特に単身男性のスポット利用ではそのようなニーズが高い傾向があるという。一方、現在家事代行サービスの利用を押し上げているのは女性だ。「女性の場合、定期利用、かつ、見知った顔にお願いしたいという要望が多い」(タスカジの和田氏)。結果、サービス離脱のリスクが高くなる。

 米国では同様のビジネスでHomejoyが昨年倒産しており、こうした直接交渉の打撃も少なからずあったと言われている。各社はこうした直接交渉が起きないような仕組みをサービス内で実装しようと模索中だ。例えば、タスカジではハウスキーパーのレベルに応じて自動的に価格が上がる仕組みを導入し、利用者との価格交渉を不要にしている。一方、利用者は、同じ人に依頼する場合でも、ハウスキーパーの利用料が上がったとしても最初に利用した料金で使い続けられるようにしている。「まだまだチューニングが必要だが、お互いにとって価格交渉のストレスがなく適正価格で利用してもらえるようにしたい」(和田氏)。また、クレームがあったときに事業者を通じて交渉できることもメリットとして打ち出す。クレームはお互い面と向かっては言いづらい。「事業者が仲介に入って交渉できるのは、サービスを使う大きなメリットだろう」(Casy)。

 2016年1月1日に厚生労働省が発表した「人口動態統計」では、5年ぶりに出生数が増加した。2015年の推計値は100万8000人で、2014年の出生数100万3539人からわずかではあるが増加。懸念されていた「出生数100万人割れ」を何とか食い止めた形となった。特に、30代女性の出生数が全体の増加を押し上げ、30歳代女性が1~6月に生んだ赤ちゃんは、前年より1万人多かったという。厚労省では雇用情勢や子育て環境の改善などが影響したとしている。

 「子育て環境の改善」が本当に出生数を押し上げたのだとしたら、こうした家事代行サービスにも今後さらにチャンスは増えるはず。家事を人に任せることの抵抗感をいかになくし、利用後のヘルパー引き抜きをいかに食い止めるか。利便性は高まってきただけに、これらの課題を克服すれば“家事代行元年”も見えてくるはずだ。

■訂正履歴
本文中にありました家事代行サービスの表記に誤りがありました。「Casy」は、「CaSy」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。 [2016年2月3日 12:30]