一般的に役所関連の仕事は大きな利益や成長が見込めるものではないが、リスクが限定的でそれなりに安定している。このため、宇宙産業の企業側も必ずしも現状がよいとは思っていない一方で、それなりに業界内の秩序が出来上がっており、状況を変えるべく積極的に動く動機が乏しい。米国などの宇宙ベンチャー活発化を引き合いに、もっと商用ビジネスを強化しないのか他の宇宙産業大手の首脳に尋ねたところ、「まずはJAXAの仕事をしっかりやる」と建前とも本音ともつかない答えが返ってきた。

防衛産業と宇宙産業の類似性

 記者は既視感を覚えた。防衛産業との類似性だ。顧客が防衛省に限られプレーヤーが固定的な市場だ。入札制度の関係上、利益率は厳格にコントロールされるものの、ピラミッドの上位、大手になればなるほど事業としては比較的安定している。戦車や潜水艦など各種の防衛装備品の性能は高いとされるが、販路が国内限定で数がさばけず、どうしてもコストが割高になる。

 政府は友好国との関係強化のほか、防衛産業の基盤維持や効率化なども視野に入れ、2014年に防衛装備移転3原則を閣議決定。海外への輸出を条件付きで認めるようになった。ただ、防衛産業の多くは右にならえのスタンスで基本的にはまだ様子見だ。急いで海外開拓に乗り出さなければ直ちに立ち行かなくなるほどの危機感を抱いていないからだろう。日本の安全保障という需要がなくなることもない。

宇宙産業が雇用を生むには戦略的な後押しが必要

 ただ、宇宙産業にも明るい兆しはある。米国ほどではないがベンチャー企業の登場、精密機器が得意なキヤノンなど異業種からの新規参入だ。ベンチャーでいえば、今後増加が見込まれる超小型衛星の打ち上げをにらんだロケット開発のインターステラテクノロジズや、50基の超小型衛星による地球観測で収集したデータの活用を図るアクセルスペースなどだ。定点的な地球観測が実現すれば、インフラや農作物などの管理や資源探査、マーケティングなどに必要な膨大なデータを収集できる。また既存大手でも三菱重工がアラブ首長国連邦(UAE)から火星探査機の打ち上げを2016年に受注するなど、海外開拓の本格化に向けた機運が徐々に高まりつつある。

 トランプ米大統領の論理ではないが、産業の存在意義は究極的にはその国に安定した雇用を生み出すかどうか。宇宙が将来有望な領域であることは数十年前から言われてきたものの、放っておいて自然に伸びるほど甘くないのはこれまでの経緯で明らかだ。宇宙産業が一定の雇用を生み出し、ベンチャーや海外開拓などの動きを成長軌道に乗せるには、各種の優遇策や政府のトップセールス、事業の予見可能性を高めるための法整備など幅広く戦略的な後押しが今こそ欠かせない。