ある大手製薬企業の社員は「メーカー(製薬企業)と小売(ドラッグストア)で温度差がある」と話す。昨年秋以降に大衆薬メーカー社員に会うと必ずセルフメディケーション税制が話題に上った。制度に少々の不満があっても、特需を期待する思いがあったのかもしれない。一方、日々消費者と接するドラッグストア側は冷静だ。新税制を商機と捉えて動いた大手チェーンは年末時点では見かけなかった。

 記者はセルフメディケーションという考えには賛同している。日本は人口当たりの医師の数が先進国の中では少ないので、安易に病院に駆け込む人が減るのは悪い話ではない。医薬品市場に占める大衆薬の比率も他の国より低い。

 大衆薬市場は近年、年間1兆円規模で横ばい状態だ。再成長を目指すには、大衆の支持を集める商品の存在が欠かせない。鍵は2つある。いずれも他の大衆薬より単価が高いスイッチOTC関連だ。

 武田薬品などは妊娠しやすい時期が分かる排卵日検査薬を昨年12月に発売した。従来は調剤薬局でしか買えなかったが、ドラッグストアなどでも購入できるようになった。これは厚生労働省が11月に排卵日検査薬のOTC化を承認したからだ。検査薬のOTC化は25年ぶりである。

厚生労働省は25年ぶりに検査薬のOTC化を認めた(写真は武田薬品工業の「ハイテスターH」)

 もちろん排卵日検査薬の需要は限定的だ。製薬業界が期待するのはインフルエンザ検査薬である。自宅で罹患が分かれば、職場や学校に迷惑をかけない。かかっていなかったのに病院に出かけて、待合室でうつされるという事態も避けられる。もしOTC化されたら大ヒットは間違いなしだ。

 もう1つの鍵は、スイッチOTCの新スキームだ。昨年8月から厚生労働省はどの医療用医薬品をOTC化するのかについて、学会や消費者などから候補を募集している。昨年12月9日には現状のスイッチOTC候補の16成分を発表。その中でもヒアルロン酸ナトリウム(ドライアイ、角膜保護など)やレボノルゲストレル(緊急避妊)などの転用が認められれば、話題になるだろう。

 「たくさん買えば、家計の節約になりますよ」という制度より、「買いたい!」と感じさせる商品の投入こそ市場を活性化させるはず。セルフメディケーション税制対象品が目立っていないドラッグストアの店舗を回ってそんなことを感じた。