以上のように、日本の民泊をめぐる状況は、解禁どころか、悪化へ向かっているとしか思えない。

 政府が規制を正当化するべく主張するのは、「利用者や地域の保護」や「警備・安全面」への配慮。これは、厚労省の検討会でも、国家戦略特区諮問会議でも、規制改革会議でも同様に議論されている共通項だ。

 「宿泊者に危険や危害がないようにすべき」「テロの温床とならないよう注意すべき」「近隣住民に迷惑がかからないようにすべき」……。概ね、官僚が選んだ委員からはこういった意見が飛び出し、官僚がそれを明文化し、前述したような方針が決まっていく。

 世界中で受け入れられているシェアリングエコノミーの普及、という観点からすれば、明後日の方向。むろん、利用者保護や安全確保は大切だが、それを理由にシェアリングエコノミーを阻害するのはおかしい。世界各国、各都市の対応を見れば、日本の迷走ぶりはより鮮明となる。

欧米で進むルール作り

 欧米諸国では、国レベルで民泊を禁止してはおらず、自治体レベルでも「一定の条件のもと規制しない」、つまり法の網から外すというのが世界的な趨勢となっている。

 例えば英ロンドンでは昨年3月、「住居を宿泊施設として使用する日数が年間90泊以内は自治体の許可を必要としない」とする法改正があった。オランダのアムステルダムも「年間60日以内、同時宿泊者4人以内、ホストが近隣の同意を得ている場合は許可不要」。上限を定めることで、業者などによる過剰なビジネスや近隣への迷惑を抑制している。

世界各地ではエアビーのような民泊を推進しようとルール策定が進む
世界各地ではエアビーのような民泊を推進しようとルール策定が進む
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 エアビーのような仲介事業者を規制する法律は、筆者が調べた限り、どこにも見当たらない。仏パリやアムステルダムなど、宿泊にかかる納税制度(宿泊税や滞在税)がある地域では、ホストではなくエアビーが自治体に一括して支払うことで解決している。

 海外で起きていることを全て良しと肯定するつもりはない。しかし、エアビーが世界中でこれだけ普及したのは、利用者が便利に感じ、社会が受け入れた証左。各国の行政も後押ししている。

 翻って日本。エアビーを起点とした民泊論議は“エアビー潰し”の方向へ進んでおり、皮肉にも、企業による空き家やマンションの空き部屋をホテルにする不動産ビジネスには追い風となっている。いったい後者は「民泊」と呼べるのだろうか。個人が生む新たな経済を阻むのではなく、育む観点が必要とされている。