この特区とは別に、全国的な民泊解禁に向けた議論が進んでいる、とも報じられている。出所は、旅館業法を管轄する「厚生労働省」で、旅館業法を適用除外とする特区とはまったく別の話だ。

 厚労省は昨年11月から有識者を集めて「民泊サービスのあり方に関する検討会」なるものを開催している。この検討会での議論を踏まえ、1月にはメディアが「民泊について、政府は年度内にも旅館業法の規制を一部緩和する方針を決めた」などと報じた。が、この表現は語弊がある。検討会が1月に出した結論は以下のようなものだ。

 「旅館業法を適用した上で、その運用を緩和することが適当」「簡易宿所の枠組みを活用して、旅館業法の許可取得の促進を図るべき」「許可を取得しやすい環境を整えるべき」「仲介事業者に対し、サービス提供者(ホスト)が旅館業法の許可を得ているかを確認させるべき」

 旅館業法で、カプセルホテルなどを想定した比較的、規制が緩い「簡易宿所」という業態に、民泊もはめ込むという発想。簡易宿所として営業許可を得るには、「客室の延べ床面積が33平方メートル以上」「帳場(フロント)の設置」といった条件が必要だが、「3平方メートル以上」「帳場は必要なし」と見直す方針で、これが「規制緩和」とされている。

 つまり、規制緩和は、エアビーのような民泊を旅館業法の規制から外す、という意味ではない。「旅館業法を緩くして、全てのホストに許可をとってもらいましょう」と、むしろ民泊を規制の網にかけようとする施策。筆者には、これが実に無意味に思えてならない。

旅館業法の内か外か

 米国発の新しい文化やサービスの流入で、旅館業法は有名無実化してしまった。気楽に副収入を得ようと考えるエアビーのホストに「旅館業」を営んでいる意識はなく、はなから営業許可など取る気はない。旅館業法の規制を緩和したとしても、今、無許可で貸しているホストが、わざわざ申請するとは思えないのだ。

 一方、これまで、違法物件をしらみつぶしに調べて摘発しようともしてこなかった行政が、「規制緩和したのだから、守らないホストは一斉摘発する」と手のひら返しをするとも思えない。旅館業法の運用は各自治体に委ねられているが、違法物件の全容を把握している自治体は皆無で、その能力もマンパワーもない。

 結果、規制緩和があったとしても、エアビーに関して言えば、これまでとあまり変わらず、むしろ違法物件は増えるばかりだろう。

 そもそも、厚労省が検討会を開くことにしたきっかけは、昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」。これをまとめた「規制改革会議」の思いとは、逆の方向へ向かっているのも解せない。

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