この話を理解するのは相当に難しい。政府内でも、少なくとも4つの組織がそれぞれの立場でバラバラに議論を進めていることが、事態をさらに複雑にしている。それぞれの組織をソースとしたニュースが五月雨に飛び出し、それぞれの利権を代弁する。結果、全体像はさらに見えにくくなっている。

 論議が進む大きなきっかけとなったのは、エアビーの国内普及である。貸主が個人であろうと物件が自宅であろうと、国内では旅館業法の許可が必須となる。ところが、煩雑な申請書類を準備し、保健所に届け出るホストなどいない。そもそも旅館業法はエアビーのようなサービスを想定しておらず、例えば33平方メートル以下の物件は許可の対象とならないため、ワンルームマンションや自宅の一室は「貸し出せない」ということになる。

 だが、時代は変わった。足下を見ても、外国人旅行者の急増でホテル不足にあえいでおり、来たる2020年の東京五輪にも民泊は役立つはず。現実に法を合わせるべく、日本でも民泊を合法化すべき――。そうした声が政府内でも高まり、昨秋の安倍晋三首相の発言につながった。

 「日本を訪れる外国の方々の滞在経験を、より便利で快適なものとしていかなければならない。このため、旅館でなくても短期に宿泊できる住居を広げていく」。これを機に、政府の関係各所は慌てて動き出し、メディアの民泊関連報道も増えた。しかし、実態は……。

単なる新手の「不動産ビジネス」

 民泊解禁の動きは、まずは特区から始まった。昨秋に安倍首相が発言したのは、「国家戦略特区諮問会議」の場。同じ日、会議は新たに14の事業計画を特区として認定した。

 このうち、大田区の事業は、条例制定など一定の条件のもと、民泊を旅館業法の適用除外とするもので、「民泊解禁へ」などと大きく報じられた。昨年12月に条例を制定した大田区は1月29日、民泊事業者の申請を開始。続いて特区認定された大阪府も条例を制定済みで、今年4月にも申請を開始する。

 だがこれらは、違法な民泊物件の解消にはほとんどつながらないだろう。特区が定める条件は、「事業者による申請」「事業者による近隣住民への説明義務」「滞在日数が6泊7日以上」など。大田区も大阪府もこれに従った条例を制定した。しかし、エアビー利用者の平均滞在日数は「4.6泊」。一箇所に6泊以上もする実需はほとんどない。

 申請開始に先立って大田区には約120事業者からの問い合わせがあり、27日の事前説明会には200人以上が集まり、立ち見が出るほどだった。大田区は「3月末までに100室以上の申請がある」と見込む。だが、そのほとんどは、空き家を借り上げ、旅行者に貸す目的の国内企業によるもの。民泊と言いながら実際は単なる新手の「不動産ビジネス」であり、個人によるシェアリングエコノミーとは無縁の世界と言える。そのため、エアビーは大田区での事業者申請を行わない方針だ。

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