ホテル業界、いずれ独占化へ

 もう一つ、アパグループの急成長を支えるのが、ホテルの生命線とも言える不動産投資だ。同社の直近5年間の直営の出店数は約40で、同業他社を圧倒している。これは、2008年のリーマン・ショック後に暴落した都心の土地を積極的に取得し、元谷代表の即断即決で戦略的に自らの「陣地」を広げてきたからだ。そこに、前述したような機能性を付加することで、独自の地位を築いてきたと言える。

 「我々が体力があるのは、土地が安い時に買い、安い時にホテルを建設したというのが大きい。簿価利回りは年々上がっていくし、収益性の高いビジネスモデルを構築していくから、新しいホテルでも高い利益が上げられます。環境が変わっても、利益率が低い会社は『水面』が上がってくるから溺れそうになるんだけど、我々はもともと高いところにいるから平気でいられる。だからより有利にビジネスが進められるという考え方ですよね」

 インバウンド消費の変化、2020年の東京五輪・パラリンピック――。ホテル業界にとっては大きなビジネスチャンスであると同時に、五輪後を見据えた時、業界を取り巻く環境がより厳しくなるとの見通しもある。元谷代表は長期的な視点で日本が観光立国によって成功できるとみる一方、業界の競争はより厳しくなると予測する。

 「資本主義の過程においては、百花繚乱から寡占化、独占化へと進む道筋がある。今のホテル業界はまだ百花繚乱で、アパといえどシェアはまだ4%程度です。これは20%、25%までいっても全然おかしくはない。資本主義下で事業をしている限り、弱肉強食の社会だから、経営者は常に未来予測をしたり、そうした市場原理を頭に叩き込んだりして経営しなくてはならないでしょう。どうやって勝者でい続けるかを真剣に考えなくてはなりません」

 さて、歴史認識を巡る今回の騒動。藤誠志として書籍を執筆する元谷代表の主義主張や歴史認識を評価するのがこの記事の目的ではないし、その主義主張をビジネスとどのように結びつけるべきなのかも軽々に結論を出せるものではないだろう。ただ、確かなのは、アパグループをここまでの巨大ホテルチェーンに育て上げた元谷代表の経営哲学や実行力が、産業界を見渡しても非常に個性的であるということ。そして、現状では成長力、収益力を取っても同社が業界で群を抜いているという事実だ。

 今回の騒動に関連しては、中国や韓国のネットユーザーらを中心に、アパホテルの不買運動ならぬ「不泊運動」も湧き上がっているが、同社の宿泊者に占める中国人観光客の割合は5%程度といい、どこまでの影響が出るかは不透明だ。アパグループ、そして元谷代表が自らの「信念」を貫き通した時、どのような評価が下されるのだろうか。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。