「例えばホテルマンが部屋までついてきて細々説明したり、シーツをめくったらチョコレートが置いてあったりとか。そういったサービスを煩わしいと感じたり、プライバシーを気にしたりする人にとっては過剰なサービスでしょう。我々は、必要なサービスはきちんと提供しつつ、不要なものは減らす。自動車だって、昔はリンカーンやキャデラックに乗るのが格好いいとされていたけど、今は恥ずかしいよね。そういったコンパクト化、効率化というのは世の中の大きな流れであり、それはホテル業でも同じだと思っています」

 こうした元谷代表の考え方を実現した最近の動きが、メーカーと組んで開発した「自動チェックイン機」だ。アパホテルでは早くから自動精算機を活用していたが、自動チェックイン機では煩雑なチェックインの手続きを簡素化でき、待ち時間を大幅に短縮できるメリットがある。千葉市・幕張の大型ホテルで試験運用した後、本格導入を決断。今後新設する大型ホテルには順次設置していく計画だという。

値付けは「神の手」に従う

 ホテルの常識を逆手に取ったような設備設計やサービス提供。こうした施策はビジネスユースで利用する顧客の支持を集めるだけでなく、アパグループの高収益を支える要因ともなっている。環境対応もその一つだ。

 「新都市型ホテルの理念として大きなものの一つは、環境に優しいホテルでもあるということです。浴室は湯の量が少なくてもすむ卵型浴槽を使ったり、シャワーには空気を混ぜて、圧力は高いけど実際に使用する湯の量は少なくしたりしている。部屋には断熱カーテンを使い、熱の放出などを減らすことでエアコンを過剰に使わなくてもすむ。今は環境に対する人々の意識が高くなるにつれ、環境に優しい消費を望む人も増えています。そうしたトレンドに沿ったのが新都市型ホテルなのです」

 こうした様々な取り組みを進めた結果、アパホテルの1室あたりの炭酸ガス排出量をかつての3分の1に減らすことに成功。そしてこれはホテルの運用コストの低減にも直結する。機能性の高い「狭い部屋」はホテル1棟あたりの客室数の多さを実現した。顧客の満足度を高めることが高収益体質を構築することにつながり、アパグループの営業利益率はホテル事業に限れば39%、グループ全体でも31%と業界では「常識外」の収益力を可能にした。

 アパホテルでもう一つよく話題となるのが、「ビジネスホテルなのに高すぎる」というもの。こうした声に対する元谷代表の主張も明確だ。

 「強気の値付けとか、弱気とかよく言われるけど、それは結局『神の手』と言われる市場経済の原理原則に基づいて、要するに需要と供給に基づいて値段は決めさせてもらっているわけです。当社では各ホテルの支配人に価格決定権を与えていて、社内ルールの範囲内、下はいくら下げても構わない。稼働率と客室平均単価を乗じた『RevPAR(レブパー)』と呼ぶ指標を重視しています。非常にわかりやすい形で値段は決まっています」

 元谷代表が自信を持ってこうした発言ができるのも、アパホテルが訪日外国人の増加という消費のトレンドだけを追い風に成長を続けているわけではないからだ。

 「基本的に、うちは1週間で一番多い平日にはビジネスマンに利用していただき、会員システムも含めて固定客を確保できている。それに加えて週末や祭日は観光客、その中に海外からの観光客もいらっしゃるという構成です。しかも、海外からの団体客は基本的には都心のホテルでは受けておらず、都心は比較的富裕層の割合が高い海外の個人からのネット予約です。顧客のバランスが良いところに稼働率を100%で維持できているから、こうして成長を続けていられるのだと思います」

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