ビジネスホテル大手のアパグループが、年明け早々から日中間の歴史認識を巡る大騒動に巻き込まれている。客室内に中国の南京大虐殺を否定する書籍を置いているとして、中国や韓国のインターネットを中心に反発が広がっているためだ。

 きっかけは、日本旅行でアパホテルに宿泊した中国人男性らが1月15日、客室に南京大虐殺を否定する内容を含む書籍が置かれていたとして中国のSNS(交流サイト)に動画を投稿。これに対し、中国人のネットユーザーらの間でアパグループを批判する声が急速に広がり、中国外務省も会見で「日本の一部の人たちが歴史を正視し、深刻に反省することを促す」と批判した。

 一方、この状況を把握したアパグループは17日に社としての見解を公表。「日本には言論の自由が保証されており、一方的な圧力によって主張を撤回することは許されてはならない」として、撤去しない方針を明確にした。日本の国内世論には書籍を撤去しないという同社の方針を毅然とした態度だと賞賛する声も上がっている。

 実は記者は騒動が起きる前の昨年12月中旬、当該の書籍を「藤誠志」のペンネームで執筆したアパグループの元谷外志雄代表に取材する機会があった。同社の今回の対応は、日中間の歴史問題を巡る企業の姿勢として極めて「常識外」だが、この元谷代表の強烈な個性が、同社が急成長を続けている大きな原動力となっていることも確かだ。

 アパグループは1984年のホテル業参入から、約30年で国内最大級の客室数を誇るホテルチェーンに成長。売上高は右肩上がりを続ける一方、営業利益率は3割と業界屈指の高さを誇る。「私が社長です」でお馴染みのアパホテル社長、元谷芙美子氏が有名だが、総帥としてアパグループ全体をまとめるのは夫である元谷外志雄代表だ。経済人としての元谷代表はどのような人物か。この記事では、取材時の元谷代表の様々な言葉からこの点に光を当ててみたい。

「新都市型」、あえて部屋は狭く

(写真:的野 弘路)

 「おもてなし」の精神を最も体現するサービスの一つであるホテル業。元谷代表は自らのホテル経営の哲学をどのように考えているのか。

 「ホテルというものは、一般的に何平米あって広ければいいとか、至れり尽くせりのサービスがあれば宿泊客が満足すると思われがち。一流ホテルとされるものは、スタッフがお客様を『ご主人様』としておもてなしして、その評価が高ければ4つ星とか5つ星が与えられるでしょう。でも本当に顧客が求めているのはそういうことなのだろうか。過去の伝統にこだわらずにゼロからスタンダードを作ったのが我々であり、『新都市型ホテル』なんです」

 アパホテルのイメージとして頻繁に語られるのが、「部屋が狭い」「サービスが簡素」ということだろう。元谷代表はマイナスと捉えられがちな特徴こそが実は強みだと強調する。一般的なホテルのシングルルームは15平方メートル程度だが、アパホテルでは11平方メートル程度に抑える一方、ゆったりした大型ベッドや50インチ以上のテレビ、高速通信の無料Wi-Fiを設置するなど機能面には徹底的にこだわっている。

 大型ベッドの横には部屋の明かりや空調などを調節するためのスイッチをまとめてあり、明かり自体も一般的なホテルよりかなり明るく設定している。ベッドは寝るためだけのものではなく、ビジネスマンが書類を広げたり、パソコン作業をしたりするスペースとして利用できるようにしているという。